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819. 日銀、物価2%達成目標時期を2018年度頃に先送りー2016.11.2 [経済ー金融]


(a) 日本語のニュース

日本銀行は、物価上昇率2%の目標達成時期の見通しを「2017年度中」から「2018年度頃」に先送りしました。
これは、日銀の黒田総裁が、1日、金融政策決定会合の後記者会見で明らかにしたもので、黒田総裁は、2013年4月大規模な金融緩和策を発表し、2%の物価目標を2年程度で達成し、デフレから脱却すると述べましたが、これで5度達成時期を先送りしたことになります。
日銀は、目標が達成できなかった理由として、消費増税後の景気低迷、原油価格の下落、新興国経済の減速、国際金融市場の変動を挙げています。
黒田総裁は、2018年4月に任期を迎えるため、在任中の目標達成は難しくなったことになります。

(b) ニュースの背景

日銀の黒田総裁は、2014年3月に行った講演の中で、「なぜ2%の物価上昇を目指すかについて、以下のように述べています。
「日本銀行が行う金融政策の目的は、「物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資すること」です。
物価の安定を実現することは、金融政策の目的であるとともに、日本銀行の責務でもあります。
日本銀行としては、物価の安定を消費者物価指数(物価を家計の消費支出で計る)の前年比で数値的に定義すると、「2%」であると考えています。その理由は、次の3つです。第一の理由は、消費者物価指数の特性、すなわち、消費者物価指数には、上方バイアス、つまり、指数の上昇率が高めになる傾向があるということです、第二に、景気が大きく悪化した場合にも、金融政策の対応力を維持するために、ある程度の物価上昇率を確保しておく方がよいという、「のりしろ」と呼ばれる考え方です。第三に、こうした考え方は、主要国の中央銀行の間では広く共有されており、多くの中央銀行が「2%」の物価上昇率を目標とする政策運営を行っていることです。つまり、「2%」は、「グローバル・スタンダード」になっているということです。」

(c)英語のニュース

The Bank of Japan has decided to push back the timing of attaining its 2 percent inflation target to around fiscal 2018 from the previously envisioned fiscal 2017.
This was announced by the bank’s governor Haruhiko Kuroda at a news conference after its policy board meeting in Tokyo on Monday.
This is the 5th postponement of the timing to achました。
ieve the inflation target since Mr. Kuroda took office in April, 2013.
The Bank of Japan has argued that lower global crude oil prices, tepid domestic demand in the wake of a consumption tax hike in 2014 and financial market instability have thwarted its efforts to achieve the inflation goal for over three years.

(d)ニュースの比較研究

日銀が物価2%上昇率の達成時期を2018年まで先送りしたというニュースについて、日本のメディアは、詳しく伝えました。外国のメディアも報道しましたが、特に、欧米のメディアは、アベノミックスがうまくいっていない点を指摘していることが特徴です。
主なメディアの報道を紹介しましょう。

アメリカの『The Wall Street Journal』紙は、”Bank of Japa Stands Pat, Trims Inflation Forecasts – Central bank maintains recent switch to slower, more pragmatic approach”(日本銀行、現状維持、インフレ予測を変更―中央銀行、より緩やかでより実用的なアプローチへの最近の変更を維持)という見出しで、”The Bank of Japan has given up its starring role in Abenomics, for now. After refitting its tool kit in September, the central bank opted Tuesday to leave policy unchanged, despite sharply cutting its inflation forecasts. And the bank doesn’t look likely to act in the coming months either as it backpedals to a less clear goal of maintaining “momentum” toward its 2% inflation target”(今や、日本銀行は、アベノミックスにおける主演の役を放棄したのだ。日銀は、9月にツールを改めた後、インフレ予測を大幅に削減したけども、(金融緩和)政策は変えないことを選んだ。 そして、日銀は、2%のインフレ目標への“勢い”を維持するというあまりはっきりしない目標に後退したので、これから先何か月の間は、行動することはなさそうだ)と報じました。

イギリスの『REUTERS』通信は、”BOJ keeps policy steady, delays inflation target again”(日本銀行、(金融緩和)政策を堅持、再びインフレ目標を先送り)という見出しで、”The Bank of Japan held off on expanding stimulus Tuesday despite once again pushing back the timing for hitting its inflation target, signaling that it will keep policy unchanged unless a severe shock threatens to derail a fragile economic recovery”(日本銀行は、刺激拡大策をとらず、インフレ目標を達成する時期を再び先送りした。これは、日銀は、ひどい衝撃が脆弱な景気回復を脱線させるようなことがない限り、(金融緩和)策を変えないままでいることを示しているのだ)と報じました。

ドイツの『Deutsche Welle』放送は、”Bank of Japan scraps inflation target”(日本銀行、インフレ目標を破棄)という見出しで、”Japan’s central bank has had to admit that its goal of pulling the nation out of its deflationary spiral is not achievable during the term of its lender’s current governor. The announcement is a blow to Abenomics”(日本の中央銀行は、日本をデフレ・スパイラルから脱却させるという目標は、総裁が在任期間中には達成できないということを認めざるをえなかった。その発表は、アベノミックスにとって打撃だ)と報じました。

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706. 日本銀行、ゼロ金利政策導入決定ー2016.2.1 [経済ー金融]

*2016.2.6の荻窪のテキスト*(706&707)

(a) 日本語のニュース

日本銀行は、これまでの大規模な金融緩和策に加え、2月16日から、初めて「マイナス金利政策」を導入することを決めました。
これは、日銀が1月29日の金融政策決定会合で決めたもので、「マイナス金利政策」というのは、銀行などの金融機関が日銀に任意で預けるお金につける利子をマイナスにする政策で、手数料を取られる形になる金融機関が、日銀に預けていたお金を企業や個人への貸し出しに回すようになり、結果として経済の活性化につながる可能性があると期待されています。

日銀の黒田総裁は、2013年4月、アベノミックス=安倍首相の経済政策の下で、デフレ脱却を目指して大規模な金融緩和政策を打ち出し、2%の物価上昇率を目標として掲げ、市場に供給する資金の量を2倍に増やすという政策を実施しました。つまり、日銀は、金融機関から大量の国債などを買い上げ、資金を供給する大規模な金融緩和政策を続けてきました。この結果、国債などの代金が、金融機関が日銀に持つ当座預金口座にたまり、直近の残高は253兆円と2013年3月末の4.4倍に膨張してしまいました。しかし、一方で、金融機関の貸し出し残高は、大規模緩和を始めた時点から直近で8.3%しか増えておらず、「緩和マネー」が日銀の口座に滞留している状態です。

今回の決定で、日銀が金融機関から預かっている当座預金のうち一定の水準を超える金額につけている金利について、現在の0.1%からマイナス0.1%に引き下げる金融緩和策を導入することになりました。これによって、金融機関は、日銀にいわば手数料を支払って資金を預けることになってしまうため、必要以上の資金を日銀に預けておくメリットが薄れることから、日銀としては、金融機関が資金をより積極的に貸し出しなどに振り向けることを期待しているのです。

今回の決定を行った背景には、原油価格が一層下落したこと、中国をはじめとする新興国や資源国の経済が減速していることなどから、金融市場が世界的に不安定であること、これによって、企業や消費者のデフレ意識の転換が遅れ、物価の基調に悪影響が及ぶリスクが増えていることがあります。

(b) ニュースの背景

マイナス金利(negative interest rate)というのは、資金を預け入れる側が手数料として金利を支払うことで、欧州中央銀行(ECB)は、低インフレ率の持続を受けて、2014年6月に追加利下げに踏み切りましたが、それと同時に、民間銀行が中央銀行に預け入れる余剰資金の金利(中銀預金金利)をマイナスにする政策を導入しました。さらに、2015年1月には量的緩和の導入を決定し、3月から国債を中心に資産の買い取りを開始しました。この結果、ユーロ圏諸国の国債利回りは一段と低下し、ドイツでは期間が長めの国債利回りもマイナスになりました。これは、金融機関は、担保として国債を保有する必要がある、現金にも保有コストがかかることに加えて、中央銀行がマイナス金利でも国債の買い取りを行ったからです。

日本では、金融機関が日本銀行に持つ当座預金のうち、任意で預けている額について、マイナスの金利をつける政策のことで、金融機関が日銀に手数料を支払うことになるので、日銀に預けていたお金を企業や個人への貸し出しに回すことが期待され、結果として、経済の活性化につながる可能性があると日銀はみています。
日銀は、今回、この当座預金口座の金利全体をマイナスにするのではなく、0.1%、0%、マイナス0.1%と3段階に分けて実施し、金融機関の収益が大きく悪化しないよう配慮しているということです。

(c)英語のニュース

The Bank of Japan has decided to introduce a negative interest rate policy for the first time, shocking markets.
The central bank hopes that by imposing 0.1% fee on selected current account deposits – effectively a negative interest rate – commercial banks will be encouraged to make more loans and so stimulate economic growth.
The decision came on the heels of sluggish economic data that could undermine corporate and consumer sentiment amid a slowdown in China and other emerging economies and plunging crude oil prices that have disrupted global financial markets.
Japan has experienced widespread deflation, or falling prices, for decades. By lowering borrowing costs, the central bank is hoping that consumers will spend more and stimulate inflation, or rising prices.

(d)ニュースの比較研究

日本銀行がマイナス金利導入を決定したニュースについては、世界各国の金融市場にショックを与えたため、日本のメディアも外国のメディアも大きく報道しました。
主なメディアの報道を紹介しましょう。

アメリカの『The Wall Street Journal』紙は、”Bank of Japan Introduces Negative Interest Rates - The Japanese central bank’s unexpected move seen as change of direction -”(日本銀行、マイナス金利を導入―日本の中央銀行の予期せぬ動きは、方向転換かー)という見出しで、”Japan’s central bank stunned the markets Friday by setting the country’s first negative interest rates, in a desperate attempt to keep the economy from sliding back into the stagnation that has dogged it for much of the last two decades. The unexpected move shows the Bank of Japan’s determination to fight global headwinds that threaten to tip the country back into deflation, a damaging cycle of price falls and weakening economy”(日本の中央銀行は、日本で初めてマイナス金利を設定することによって市場を驚かせた。それは、過去ほぼ20年の間日本の経済に付きまとって来た不況に戻らないようにする不退転の試みなのだ。その突然の動きは、日本が物価下落と弱体化する経済の負の周期であるデフレに戻る恐れがある世界的な逆風に向かって戦おうとする日本銀行の決意を示したものだ)と報じました。

アメリカの『The New York Times』紙は、”Bank of Japan, in a Surprise, Adopts Negative Interest Rate”(日本銀行、驚くべきことに、マイナス金利を導入)という見出しで、”As Japan’s economic doldrums have lingered, its leaders have tried a number of tricks over the years, from increasing government spending to flooding the financial syste with cash. With the global economy looking increasingly fragile, Japan is now taking a more aggressive step by cutting interest rates below zero on Friday”(日本の経済的停滞が長引いたので、日本の指導者たちは、このところ、政府の支出を増やしたり、金融制度を現金であふれさせたりして数多くの策略を試みた。世界経済がますます脆弱性が明らかになると、日本は、今や、さらに攻撃的な措置をとり、金利をゼロ以下に削減するということにしたのだ)と報じました。


イギリスの『Financial Times』紙は、”Japan joins negative rates club”(日本、マイナス金利のクラブに参加)という見出しで、”The Bank of Japan has cut interest rates to minus 0.1 per cent, stunning analysts and sparking a surge in equity and bond markets, as policymakers around the world respond to mounting worries about the outlook in China and the risks of a global slowdown”(世界の政策策定者たちが、中国の今後の見通しや世界的な景気後退の危険性に関する大きくなっている憂慮に対応している中で、日本銀行は、金利をマイナス0.1%に引き下げたため、分析家たちを驚かせ、株・債券市場での高騰に火をつけた)と報じました。

イギリスの『The Guardian』紙は、”Bank of Japan shocks markets by adopting negative interest rates – The central bank has imposed a 0.1% fee on deposits to force more borrowing as way out of the deflationary spiral –“(日本銀行、マイナス金利導入で市場に衝撃―中央銀行、デフレ・スパイラルからの脱却として借入金を増やすため、預金に0.1%の手数料を課す)という見出しで、”Japan’s central bank has made a shock decision to adopt negative interest rates, in an attempt to protect the flagging economy from market volatility and fears over the global economy”(日本の中央銀行は、マイナス金利政策を導入するという衝撃的な決定を行った。それは、弱体化しつつある経済を市場の乱高下や世界経済をめぐる懸念から守ろうとする試みなのだ)と報じました。






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289.日銀、大胆な金融緩和策決定、資金供給2年で2倍ー2013.4.4 [経済ー金融]

(a)日本語のニュース

日本の中央銀行である日本銀行は、黒田新総裁の下でのはじめての金融政策決定会合を4日開き、資金供給の規模を2年間でこれまでの2倍に拡大することなど新たな量的・質的金融緩和策を決めました。
この緩和策は、デフレから脱却するため2%の物価上昇率の目標を2年程度で実現することを念頭に、日銀が供給するお金の量を2012年末の138兆円から2014年末に270兆円に拡大することなど、これまでにない大規模な金融緩和に転換することを全員一致で決めました。
さらに、日銀は、長期の国債を積極的に買い入れ、購入量を2112年末の89兆円から2013年末には140兆円に、さらに2014年末には190兆円に増やすことや株式を組み込んだETF=上場投資信託の保有残高を年間1兆円増やし、2年間で2倍以上にすることを決めました。
日銀は、今回の措置によって、安倍首相の進める経済政策「アベノミックス」を金融面から後押しし、15年近く続いたデフレからの脱却をはかり、2%の物価目標を達成するまで大胆な金融緩和策を続ける姿勢を示したものとして注目されます。

(b)ニュースの背景

日銀が世の中に供給するお金の量を資金供給量=マネタリーベースといっています。具体的には、日銀が供給し世の中に出回っている現金と民間の金融機関が日銀に持っている当座預金の残高の合計額のことです。日銀は、マネタリーベースを増やすことで、このお金を元手に民間の銀行が企業や個人に融資し、投資や消費が増え、経済全体にお金が出回って経済活動が活性化することを期待しています。

今回の日銀の大胆な金融緩和策については、歓迎する一方で、日銀の国債購入に歯止めがきかなくなり、財政赤字の穴埋めにつながるとする懸念もでています。つまり、日銀が民間の金融機関から毎月買い入れる長期国債の額はおよそ7兆円に達し、毎月の国債発行額の7割と非常に高いことから、国が国債を発行してお金を調達するのを日銀が手助けしていると受け止められれば、国債価格が暴落し金利は高騰する可能性があります。国債を大量に保有する金融機関の経営が悪化し金融不安を招く恐れもあります。
また、アベノミックスへの期待感から、すでに株価や不動産の価格が上昇傾向にありますが、今回の大胆な金融緩和策で世の中にお金があふれ、1980年代後半のようなバブル景気になる危険性を指摘する経済専門家もいます。

(c)英語のニュース

The Ban of Japan has decided on a new monetary policy to pursue further monetary easing to
achieve a 2 percent inflation target in about 2 years in an effort to end deflation.
The central bank made the decision at a monetary policy meeting on Thursday, chaired by new Governor Haruhiko Kuroda, who took office on March 20.
The Bank of Japan decided to double the funds it supplies to the market over two years. It expects the monetary base to increase from the December 2012 amount of 138 trillion yen, or about 1.5 trillion U.S. dollars, to 270 trillion yen, or 2.9 trillion U.S. dollars, in December 2014.
The Bank of Japan said that its holding of Japanese government bonds and exchange-traded funds, or ETFs, will also double during the period. The value of ETFs is projected to reach 3.5 trillion yen, or around 38 billion U.S. dollars in 2 years.

(d)ニュースの比較研究

日銀が黒田新総裁の下で、大胆な金融緩和策を決めたニュースについては、世界的な関心をひき、日本のメディアも外国のメディアも大々的に報道しました。
米英の代表的なメディアの報道を紹介しましょう。

アメリカの『The Wall Street Journal』紙は、"Bank of Japan Launches Easing Campaign"(日本銀行、金融緩和策打ち出す)という見出しで、"The Bank of Japan on Thursday launched an aggressive new easing program in what traders called a surprisingly bold first step by new Gov. Haruhiko Kuroda as he begins his campaign to rid th economy of more than 15 years of deflation"(日本銀行は、大胆な新たな金融緩和プログラムを打ち出した。市場関係者は日銀の黒田新総裁による驚くべき大胆な第1歩とみている。彼は、15年以上のデフレから脱却する計画を始めたのだ)と報じました。

アメリカの『CNN(=Cable News Network)』放送は、"Bank of Japan takes fight to deflation”(日本銀行、デフレとの戦いに挑む)という見出しで、”The Bank of Japan launched what promises to be an aggressive campaign against deflation Thursday, annoucing a bold set of policies that exceeded market expectation"(日本銀行は、大胆なデフレ脱却を約束することを始めた。市場の期待を上回る大胆な一連の政策を発表したのだ)と報じました。

イギリスの『REUTERS』通信は、BOJ shocks with new base money target, boosts asset buying"(日本銀行、新たな資金供給目標で大きな衝撃を与え、株大幅続伸)という見出しで、"The Bank of Japan shocked markets on Thursday with a radical overhaul of its policymaking, adopting a new balance sheet target and pledging to double its government bond holdings in two years as it seeks to end nearly two decades of deflation"(日本銀行は、金融政策決定の大胆な総点検で市場に衝撃を与えた。それは、資金供給目標や国債の買い入れを2年間で倍増することで、ほぼ20年間続くデフレから脱却するのが目的だ)と報じています。

イギリスの『BBC(=British Broadcasting Corporation)』放送は,”Bank of Japan's Haruhiko Kuroda in aggressive growth move"(日本銀行の黒田東彦新総裁、大胆な成長の動き)という見出しで、、"Japan's central bank has surprised markets with the size of the latest stimulus package, as it tries to spur growth and end years of falling prices"(日本の中央銀行は、最新の景気刺激策の大きさで市場を驚かせた。それは、日銀が経済成長を促し、何年もの物価下落に終止符を打とうするものだ)と報じました。

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