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191.EU、日本とのEPA交渉開始決定ー2012.11.29 [経済ー貿易、国際ーヨーロッパ]

(a)日本語のニュース

EU=ヨーロッパ連合は、日本とのEPA=経済連携協定の締結に向けての交渉を始めることを決めました。
これは、29日ブリュッセルで開かれたEUの貿易相の理事会で決まったもので、来年初めにも日本とEUの首脳会議を開いて、正式に交渉入りを宣言する見通しです。
これによって、日本とEUは、世界のGDP=国内総生産の3割以上を占める自由貿易圏の創設を目指して交渉を始めることになりました。
しかし、日本とのEPAについては、フランスやイタリアなどが日本からの自動車の輸入が急増することに強い懸念を示しているほか、公共事業や鉄道などの分野で日本側の市場開放の取り組みが不十分だとする不満の声も根強く、EUとしては、交渉開始から1年後に日本政府の取り組みを評価し、自由化に向けた取り組みが不十分と判断した場合には、交渉を打ち切ることを条件にしています。
日本とEUがEPAを締結すれば、日本が大規模市場の先進国と結ぶ初めてのEPAとなります。

(b)ニュースの背景

EU(=European Union ヨーロッパ連合)は、ヨーロッパの27カ国で構成される地域協力機構。
日本からEUへの輸出額は、昨年は、約7兆4000億円で、自動車や機械類を中心に輸出しており、輸出総額に占める割合は、11.6%で、日本にとっては、中国(19.8%)、アメリカ(15.3%),ASEAN=東南アジア諸国連合(15.0%)に次ぐ貿易相手です。一方、輸入額は、6兆4000億円で、化学品や自動車の輸入が中心です。
日本の対EU輸入のうち関税がかかる貿易額の割合は約30%、一方で日本の対EU輸出で関税のかかる割合は60%を超えており、特に自動車は10%、テレビは14%の関税がかかるため、EPAによる関税引き下げは、日本にとっても必要になっています。

EPA(=Economic Partnership Agreement)は、経済連携協定のことで、特定の国や地域の間で、関税を削減・撤廃したり、人の行き来を円滑にしたりする協定のことです。FTA(=Free Trade Agreement 自由貿易協定)よりも広い経済分野が対象になっています。

日本の貿易自由化交渉については、来年から交渉が始まるアジア16カ国(ASEAN10カ国、日本、韓国、中国、オーストラリア、ニュージーランド、インド)によるRCEP(=Regional Comprehensive Economic Partnership agreement 包括的経済連携協定)に参加することが決まっています。また、アメリカ、オーストラリアなど11カ国が参加するTPP(=Trans-Pacific Partnership agreement 環太平洋経済連携協定)の交渉に参加することを検討しています。さらに2国間のEPAも13の国と地域と締結しており、カナダなどとも締結交渉を始めています。こうした交渉が妥結すれば、輸出に大きく依存している日本経済にとって大きなプラスになるものと思われます。 

(c)英語のニュース

The European Union has decided to start formal negotiations with Japan to conclude a free trade agreement.
The decision was made at a meeting of trade ministers fron the 27 member nations in Brussels on Thursday.
The EU and Japan are expected to declare the launch of formal negotiations at a bilateral summit early next year and launch working-level talks by next spring.
The E.U and Japan together account for some 30 percent of global gross domestic product.

(d) ニュースの比較研究

EUが日本とEPA締結交渉開始決定のニュースについては、日本のメディアは、すべてEPAという表現で大きく伝えましたが、ヨーロッパのメディアは、日本とFTA締結交渉開始決定と伝え、EPAという表現は使っていません。アメリカなどヨーロッパ以外のメディアは、このニュースそのものをほとんど伝えていません。
ヨーロッパの代表的なメディアの報道を紹介しましょう。

イギリスの『REUTERS』通信は、"EU, Japan to seek trade deal despite carmakers fears"(EUと日本、自動車産業の恐れにもかかわらず、貿易協定締結を求める)という見出しで、"EU trade ministers overcame resistance from the car industry on Thursday and agreed to start negotiations to create a free-trade pact with Japan, Europe's most ambitious step so far in a strategy to tie up deals with the world's biggest economies" (EUの貿易相は、自動車産業の抵抗を克服し、日本と自由貿易協定を締結する交渉を始めることで合意した。それは、世界の経済大国と提携する戦略の中で、ヨーロッパのこれまでで最ものぞましい手段だ)と」報じました。

フランスの『AFP(=L'Agence France- Presse)』通信は、”EU greenlights talks on huge free-trade deal with Japan"(EU,日本との巨大な自由貿易の協定に関する交渉を許可)という見出しで、"European Union trade ministers agreed Thursday to launch negotiations on a megasize free-trade deal with Japan despite bitter opposition from Europe's struggling carmakers"(ヨーロッパ連合の貿易相は、ヨーロッパの苦闘している自動車産業からのきびしい反対にもかかわらず、日本との巨大な自由貿易の取引に関する交渉を始めることで合意した)と報じました。

ドイツの『Deutsche Welle(ドイチェ・ヴェレ)』放送は、"EU-Japan free trade agreement clears major hurdle"(EUと日本の自由貿易協定、大きな障害を越える)という見出しで、"EU ministers have given the green light for the bloc's executive to start negotiations with Japan on a free trade agreement. Special caveats are to ensure that the European car industry will not be harmed"(EUの閣僚は、日本と自由貿易協定の関する交渉を開始するよう、EUの執行部に認可を与えた。ただし、ヨーロッパの自動車産業に害を及ぼさないことを確認するという特別な条件が付いている)と報じました。







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