476.政府、新エネルギー基本計画を決定、原発ゼロを転換ー2014.4.11 [政治ー原発]
（a）日本語のニュース
日本政府は、11日の閣議で、国のエネルギー政策の指針となるエネルギー基本計画を決めました。これは、原子力を重要な電源の一つと位置づけ、原子力発電所の再稼働を進める計画で、前の民主党政権が東日本大震災後2012年に打ち出した「原発ゼロ」を目指す方針を転換するものです。
エネルギー基本計画では、昼夜の時間帯にかかわらず、低い発電コストで動かせるベースロード電源と位置づけ、石炭とともに重要な電源とし、原子力規制委員会の安全審査に合格した原発の再稼働を進めることを明記しています。
原発への依存度については、「省エネルギー・再生可能エネルギーの導入や火力発電所の効率化などにより可能な限り低減させる」としていますが、いつまで、どれだけ減らすかの道筋は示していません。また、原発の新増設をどうするかも明記していません。
エネルギー基本計画を改定するのは、2010年以来のことで、2011年の東日本大震災における東京電力福島第1原子力発電所の事故後初めてです。事故後2012年民主党政権は、「2030年代の原発稼働セロ」をめざすエネルギー・環境戦略を策定しましたが、閣議決定はできませんでした。
国民の間で、脱原発を求める声が多い中で、安倍政権は、原発を将来にわたり活用し続ける姿勢を明らかにし、今後原発再稼働に向けた準備や原発輸出の動きを活発化させるものとみられています。
(b）ニュースの背景
11日に閣議決定したエネルギー基本計画の要旨は、以下の通りです。
・はじめに
政府・原子力事業者は、いわゆる「安全神話」に陥り、十分な過酷事故への対応ができず、悲惨な事態を防ぐことができなかったことへの深い反省を一時たりとも放念してはならない。
一方、原子力発電所が停止した結果、化石燃料への依存度が高まり、電気料金を始めとしたエネルギーコストの増大となって、経済活動や家計に負担をかけている。
・電源位置づけ
発電コストが低く安定的で、昼夜を問わず継続的に稼働できる地熱、一般水力、原子力、石炭を「ベースロード電源」と位置付ける。
発電コストが、ベースロード電源の次に安価で、電力需要の動向に応じて、出力を機動的に調整できる天然ガスなどを「ミドル電源」とする。
発電コストが高いが、電力需要に応じて出力を機動的に調整できる石油火力、揚水式水力などを「ピーク電源」とする。
・原子力
原子力は、運転コストが低く変動も少なく、需給構造の安定性に寄与する重要なベースロード電源である。
原子力規制委員会の規制基準に適合した原発の再稼働は、進める。
原発への依存度は、省エネルギー・再生可能エネルギーの導入や火力発電所の効率化により、可能な限り低減する。
・再生可能エネルギー
重要な低炭素の国産エネルギー源で、太陽光や風力、地熱、水力、木質バイオマスなどがある。これらを2013年から3年程度導入を最大限加速し、その後も積極的に推進する。
・核燃料サイクル
核燃料サイクル（使用済み核燃料を再処理し利用するシステムのことで、ウランを加工→発電→再処理→再発電という循環でリサイクルする）は、再処理やプルサーマル（MOX燃料－使用済み核燃料から再処理して得られる酸化プルトニウムと酸化ウランを混ぜた混合酸化物燃料ーを軽水炉で燃やす発電）を推進する。
高速増殖炉「もんじゅ」は、廃棄物の減容・有害度の低減や核不拡散関連技術の向上のための国際的な研究拠点と位置付ける。
高レベル放射性廃棄物は、国が前面に立って、最終処分に向けた取り組みを進める。
(c）英語のニュース
The Japanese government has decided on a new basic energy plan that calls nuclear power a key energy source.
The plan, approved by the Cabinet on Friday, is the first since the nuclear disaster in Fukushima, north-eastern Japan, in 2011.
The Liberal Democratic Party-led government plan is a clear departure from the zero-nuclear policy set by the previous Democratic Party-led government, which pledged to abolish all nuclear power plants by the 2030s.
The new plan defines nuclear power as an important base-load power source that enables a stable supply of energy.
The new plan says that the government will allow nuclear plants to resume operations if they meet safety standards set by the Nuclear Regulation Authority.
It also says that the govenment will lower as much as possible Japan's dependency on nuclear power and push for the development of more renewable energies, including wind, geothermal heat and solar power, in particular over the next three years.
The new plan avoids setting a specific goal for a desirable ratio of energy sources for Japan, including oil, gas, nuclear power and renewable energy.
(d)ニュースの比較研究
日本政府が原発ゼロから原発再稼働に転じたエネルギー基本計画を閣議決定したというニュースについては、日本のメデイァも外国のメディアも大きく報道していましたが、外国のメディアは、3年前福島の原発事故があったにもかかわらず、なぜかという視点から伝えたものが多かったと思います。
主要な欧米のメディアの報道を紹介しましょう。
アメリカのディジタル・グローバル・ニュースの『International Business Times』は、"Japan's Mothballed Nuclear Power Program Reinstated Following Fukushima Disaster"（福島の原発事故以降日本の保存されていた原子力発電計画、再登場）という見出しで、"Japan's Cabinet on Friday approved a new energy policy, overturning the previous government's decision to mothball the country's nuclear power plants, following the 2011 Fukushima disaster"（日本の内閣は、2011年の福島の原発事故以降日本の原発をしまい込むという前の政権の決定を覆し、新たなエネルギー政策を承認した）と報じました。
フランスの『AFP=Agence-France Presse)』通信は、"Japan to keep using nuclear in new energy plan"（日本、新エネルギー計画に原子力の使用を継続）という見出しで、"Japan on Friday said nuclear power would remain an important source of energy as the government approved a new Basic Energy Plan, the first policy of its kind since the 2011 Fukushim disaster"（日本政府は、2011年の福島の原発事故以来、この種では初めての政策である新エネルギー基本計画を承認し、日本は、原子力が、重要なエネルギー源のままであると述べた）と報じました。
イギリスの『BBC(=British Broadcasting Corporation)』放送は、"Japan approves energy plan backing nuclear power"（日本、原子力を支持するエネルギー計画を承認）という見出しで、”The Japanese government has approved an energy plan that backs the use of nuclear power, despite public anxiety after the Fukushima disaster"（日本政府は、エネルギー計画を承認した。これは、福島の原発事故後の国民の懸念にもかかわらず、原子力の使用を支持するものだ）と報じました。
日本政府は、11日の閣議で、国のエネルギー政策の指針となるエネルギー基本計画を決めました。これは、原子力を重要な電源の一つと位置づけ、原子力発電所の再稼働を進める計画で、前の民主党政権が東日本大震災後2012年に打ち出した「原発ゼロ」を目指す方針を転換するものです。
エネルギー基本計画では、昼夜の時間帯にかかわらず、低い発電コストで動かせるベースロード電源と位置づけ、石炭とともに重要な電源とし、原子力規制委員会の安全審査に合格した原発の再稼働を進めることを明記しています。
原発への依存度については、「省エネルギー・再生可能エネルギーの導入や火力発電所の効率化などにより可能な限り低減させる」としていますが、いつまで、どれだけ減らすかの道筋は示していません。また、原発の新増設をどうするかも明記していません。
エネルギー基本計画を改定するのは、2010年以来のことで、2011年の東日本大震災における東京電力福島第1原子力発電所の事故後初めてです。事故後2012年民主党政権は、「2030年代の原発稼働セロ」をめざすエネルギー・環境戦略を策定しましたが、閣議決定はできませんでした。
国民の間で、脱原発を求める声が多い中で、安倍政権は、原発を将来にわたり活用し続ける姿勢を明らかにし、今後原発再稼働に向けた準備や原発輸出の動きを活発化させるものとみられています。
(b）ニュースの背景
11日に閣議決定したエネルギー基本計画の要旨は、以下の通りです。
・はじめに
政府・原子力事業者は、いわゆる「安全神話」に陥り、十分な過酷事故への対応ができず、悲惨な事態を防ぐことができなかったことへの深い反省を一時たりとも放念してはならない。
一方、原子力発電所が停止した結果、化石燃料への依存度が高まり、電気料金を始めとしたエネルギーコストの増大となって、経済活動や家計に負担をかけている。
・電源位置づけ
発電コストが低く安定的で、昼夜を問わず継続的に稼働できる地熱、一般水力、原子力、石炭を「ベースロード電源」と位置付ける。
発電コストが、ベースロード電源の次に安価で、電力需要の動向に応じて、出力を機動的に調整できる天然ガスなどを「ミドル電源」とする。
発電コストが高いが、電力需要に応じて出力を機動的に調整できる石油火力、揚水式水力などを「ピーク電源」とする。
・原子力
原子力は、運転コストが低く変動も少なく、需給構造の安定性に寄与する重要なベースロード電源である。
原子力規制委員会の規制基準に適合した原発の再稼働は、進める。
原発への依存度は、省エネルギー・再生可能エネルギーの導入や火力発電所の効率化により、可能な限り低減する。
・再生可能エネルギー
重要な低炭素の国産エネルギー源で、太陽光や風力、地熱、水力、木質バイオマスなどがある。これらを2013年から3年程度導入を最大限加速し、その後も積極的に推進する。
・核燃料サイクル
核燃料サイクル（使用済み核燃料を再処理し利用するシステムのことで、ウランを加工→発電→再処理→再発電という循環でリサイクルする）は、再処理やプルサーマル（MOX燃料－使用済み核燃料から再処理して得られる酸化プルトニウムと酸化ウランを混ぜた混合酸化物燃料ーを軽水炉で燃やす発電）を推進する。
高速増殖炉「もんじゅ」は、廃棄物の減容・有害度の低減や核不拡散関連技術の向上のための国際的な研究拠点と位置付ける。
高レベル放射性廃棄物は、国が前面に立って、最終処分に向けた取り組みを進める。
(c）英語のニュース
The Japanese government has decided on a new basic energy plan that calls nuclear power a key energy source.
The plan, approved by the Cabinet on Friday, is the first since the nuclear disaster in Fukushima, north-eastern Japan, in 2011.
The Liberal Democratic Party-led government plan is a clear departure from the zero-nuclear policy set by the previous Democratic Party-led government, which pledged to abolish all nuclear power plants by the 2030s.
The new plan defines nuclear power as an important base-load power source that enables a stable supply of energy.
The new plan says that the government will allow nuclear plants to resume operations if they meet safety standards set by the Nuclear Regulation Authority.
It also says that the govenment will lower as much as possible Japan's dependency on nuclear power and push for the development of more renewable energies, including wind, geothermal heat and solar power, in particular over the next three years.
The new plan avoids setting a specific goal for a desirable ratio of energy sources for Japan, including oil, gas, nuclear power and renewable energy.
(d)ニュースの比較研究
日本政府が原発ゼロから原発再稼働に転じたエネルギー基本計画を閣議決定したというニュースについては、日本のメデイァも外国のメディアも大きく報道していましたが、外国のメディアは、3年前福島の原発事故があったにもかかわらず、なぜかという視点から伝えたものが多かったと思います。
主要な欧米のメディアの報道を紹介しましょう。
アメリカのディジタル・グローバル・ニュースの『International Business Times』は、"Japan's Mothballed Nuclear Power Program Reinstated Following Fukushima Disaster"（福島の原発事故以降日本の保存されていた原子力発電計画、再登場）という見出しで、"Japan's Cabinet on Friday approved a new energy policy, overturning the previous government's decision to mothball the country's nuclear power plants, following the 2011 Fukushima disaster"（日本の内閣は、2011年の福島の原発事故以降日本の原発をしまい込むという前の政権の決定を覆し、新たなエネルギー政策を承認した）と報じました。
フランスの『AFP=Agence-France Presse)』通信は、"Japan to keep using nuclear in new energy plan"（日本、新エネルギー計画に原子力の使用を継続）という見出しで、"Japan on Friday said nuclear power would remain an important source of energy as the government approved a new Basic Energy Plan, the first policy of its kind since the 2011 Fukushim disaster"（日本政府は、2011年の福島の原発事故以来、この種では初めての政策である新エネルギー基本計画を承認し、日本は、原子力が、重要なエネルギー源のままであると述べた）と報じました。
イギリスの『BBC(=British Broadcasting Corporation)』放送は、"Japan approves energy plan backing nuclear power"（日本、原子力を支持するエネルギー計画を承認）という見出しで、”The Japanese government has approved an energy plan that backs the use of nuclear power, despite public anxiety after the Fukushima disaster"（日本政府は、エネルギー計画を承認した。これは、福島の原発事故後の国民の懸念にもかかわらず、原子力の使用を支持するものだ）と報じました。
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