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539.米、シリアに空爆拡大ー2014.9.11 [国際―中東、アメリカ、政治ー外交]

(a)日本語のニュース

アメリカのオバマ大統領は、イラクとシリアで勢力を拡大しているイスラム過激派組織「イスラム国」への空爆をイラクに続きシリアにも拡大する意向を表明しました。
これは、オバマ大統領が、10日テレビ演説で、イスラム過激派組織「イスラム国」に対処する包括的な戦略を明らかにした中で述べたものです。
オバマ大統領は、「イスラム国」による脅威を後退させるため、アメリカは幅広い連合を先導していくと述べ、同盟国や中東諸国などと国際的な包囲網を構築し、「イスラム国」を弱体化させ、最終的に壊滅させる決意を強調しました。
さらに、オバマ大統領は、イラク政府軍を支援するため、アメリカ軍475人をイラクに追加派遣し、訓練や情報収集にあたらせると述べました。
しかし、アメリカ軍の戦闘部隊が国外で戦うことはないと述べ、アメリカ軍の地上部隊派遣については重ねて否定しました。
オバマ大統領は、これまで空爆をイラクに限定し、シリアへ拡大することについては慎重な姿勢を示してきましたが、アメリカ人ジャーナリスト2人が相次いで「イスラム国」の戦闘員に殺害されたことを受けて、アメリカではシリアへの空爆を支持する世論が高まっていることを踏まえ、11月の中間選挙を控え、シリアへの空爆拡大に踏み切ったものとみられています。

一方、日本政府の管義偉官房長官は、11日の記者会見で、アメリカのシリアへの空爆拡大を支持する考えを明らかにしました。

(b)ニュースの背景

「イスラム国」(Islamic State)というのは、イラクとシリアで勢力を拡大しているイスラム教スンニ派の過激派組織のことです。
もともとは、「イラクとシリアのイスラム国」(ISIS=Islamic State of Iraq and Syria)または「イラクとレバントのイスラム国」(ISIL=Islamic State of Iraq and the Levant)と名乗っていましたが、2014年6月イスラム国家として樹立を宣言し、「イスラム国」(Islamic State)を国名とすると一方的に宣言しましたが、各国ともこれを承認していません。

アメリカ軍は、2011年12月イラクからの撤退を完了していましたが、2014年6月イラク政府軍とイスラム過激派組織ISISとの間の戦闘が激化し、過激派組織がイラク北部を制圧し、首都バグダッドに迫る勢いになったことから、アメリカのオバマ大統領は、イラク政府軍を支援するため、最大で300人の軍事顧問をイラクに派遣し、首都バグダッドとイラク北部にイラク軍と共同作戦本部を設置し、イラク政府軍の訓練にあたらせると発表しました。
その後、過激派組織が「イスラム国」の樹立を宣言したほか、イラク北部でクルド人少数派住民への迫害を強めるなどしたため、8月オバマ大統領は、イラク北部のイスラム過激派組織に対する空爆に踏み切りました。
アメリカ軍が9月9日発表したところによりますと、8月8日イラク北部で空爆を開始して以来、およそ150回の空爆を行ったということです。空爆は、イラク中西部のハディーサ・ダム周辺で実施し、戦闘機と無人機を投入し過激派組織の武装車両などを攻撃しているということです。

(c)英語のニュース

U.S. President Barack Obama has expressed his readiness to approve airstrikes against Islamic State militants in Syria in addition to Iraq.
This was contained in a U.S. strategy to combat the militants which Mr. Obama outlined in a televised speech on Wednesday.
Mr. Obama said that the United States will not hesitate to take action against the militants in Syria and that the Unites States will lead a broad coalition to roll back the militants' threat and degrade and ultimately destroy the group.
Mr. Obama said that 475 U.S. military personnel will be sent to Iraq to assist Iraqi govrnment forces, but they will not have a combat role.
He had previously cautious about expanding airstrikes to Syria, but public support in the United States for such action has grown after the militants killed 2 American journalists.

Meanwhile, in Tokyo, Chief Cabinet Secretary Yoshihide Suga expressed Japan's support of President Obama's announcement on U.S. airstrikes on Islamic militants in Syria.

(d)ニュースの比較研究

アメリカのオバマ大統領が、空爆をイラクだけでなくシリアにも拡大する方針を明らかにしたニュースについては、アメリカのメディアはもちろん世界中に報道されました。アメリカのジャーナリスト2人がイスラム過激派組織「イスラム国」の戦闘員に殺害された模様がソーシャル・メディアを通じて放映され、世界の人々に衝撃を与えました。これに対して、アメリカ政府がどうでるか注目されていたからです。
アメリカのメディアの報道を紹介しましょう。

『The Wall Street Journal』紙は、"Obama Lays Out Plan to Fight Islamic State Militants"(オバマ大統領、「イスラム国」の過激派と戦うための計画を提示)という見出しで、"President Barack Obama authorized the start of U.S. airstrikes in Syria and expanded a month-long bombing campaign in Iraq to "degrade and ultimately destroy Islamic militants who recently beheaded two Americans"(オバマ大統領は、シリアへのアメリカの空爆の開始を許可し、イラクにおける1か月にわたる空爆を拡大した。これは、最近アメリカ人ジャーナリスト2人の首を切ったイスラム教過激派を弱体化させ究極的に破壊するためである)と報じました。

『The new York Times』紙は、"Obama, in Speech on ISIS, Promises Sustained Effort to Rout Militants"(オアバマ大統領、ISIS(「イラクとシリアのイスラム国」)に関する演説で、イスラム過激派を壊滅するための持続する努力を約束)という見出しで、"President Obama on Wednesday authorized a major expansion of the military campaign against rampaging Sunni militants in the Middle East, including Amrican airstrikes in Syria and the deployment of 475 more military advisers to Iraq. But he sought to dispel fears that the United States was embarking on a repeat of the wars in Iraq and Afghanistan"(オバマ大統領は、中東の凶暴なスンニ派の過激派に対する軍事行動の大きな拡大を許可し多。その中には、シリアへのアメリカの空爆やイラクへの475人の軍事顧問のさらなる展開が含まれる。しかし、アメリカがイラクやアフガニスタンの戦争を繰り返す恐れを一掃したいと思ったのだ)と報じました。

『Washington Post』紙は、"Obama announces 'broad coalition' to fight Islamic State extremist group"(オバマ大統領、「イスラム国」過激派と戦うための’広範な連合’を発表)という見出しで、"President Obama on Wednesday night outlined an open-ended campaign to combat the threat posed by the Islamic State, significantly expanding the counter-terrorism strategy that has been a hallmark of his presidency"(オバマ大統領は、「イスラム国」による脅しに戦うための無期限の作戦を概説した。これは、大統領の特質だった反テロ戦略を大きく拡大するものだった)と報じました。











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共通テーマ:ニュース

506.イラクの戦闘激化で、アメリカ、最大300人の軍事顧問派遣ー2014.6.20 [国際―中東、アメリカ、政治ー外交]

*2014.6.21のサロンのテキスト*

(a)日本語のニュース

イラクで政府軍とイスラム過激派組織の激戦が続く中で、アメリカのオバマ大統領は、イラク政府軍を支援するため、最大で300人の軍事顧問を派遣すると発表しました。
オバマ大統領は、19日ホワイトハウスで記者会見し、アメリカは、首都バグダッドとイラク北部にイラク政府軍と共同作戦本部を設置し、イスラム過激派組織の動きについての情報を共有するとともに、最大で300人の軍事顧問を派遣し、イラク政府軍の訓練にあたらせるなどの支援をしていく方針を明らかにしました。これは、首都バグダッドに迫るイスラム過激派組織「ISIS=イラク・シリアのイスラム国」に対抗するためです。
オバマ大統領は、また、イラクに再び大規模な戦闘部隊を派遣する考えはないと強調しながらも、必要な場合には、イスラム過激派組織に対して限定的な軍事行動をとる選択肢を残しました。これによって、イラクの空爆は、当面は、見送られる見通しになりました。
さらに、オバマ大統領は、ケリー国務長官を今週末から中東やヨーロッパに派遣し、対応を協議していくことも明らかにしました。

イラクでは、政府軍とイスラム教スンニ派でアルカイダ系の過激派組織「ISIS=イラク・シリアのイスラム国」の間で激戦が続き、戦闘は、首都バグダッドに迫る勢いです。
「ISIS」は、第2の都市モスルを占拠するなど北部と西部の拠点を制圧し、20日現在、首都バグダッドの北およそ50キロのところまで迫っており、北と西の2方向から首都を脅かす構えをみせています。「ISIS」は、北部バイジにある国内最大の製油所を襲撃しました。
これに対して、政府軍は、「ISIS」の拠点に対して激しい空爆を加え、各地で一進一退の攻防が続いています。
「ISIS」は、イスラム教スンニ派の過激派組織で、イラクとシリアにまたがって活動し、これまで2期8年つとめたマリキ首相が、自らの支持基盤であるイスラム教シーア派を優遇し、少数派のスンニ派を排除してきたことに強く反発し、マリキ政権打倒を掲げ、大攻勢をかけ、北部の主要都市などを制圧して南下し、首都バグダッドに迫っています。シリアの内戦が、イラクにまで拡大した形になっています。

(b)ニュースの背景

イスラーム(Islam)は、イスラム教のことで、キリスト教と仏教とともに世界3大宗教の1つです。イスラム教徒は、ムスリム(Muslim)といわれ、中東を中心に、北アフリカ、中央アジアなど世界中に広がっており、およそ16億人にのぼるといわれ、キリスト教徒に次いで2番目に多く、現在も増え続けています。
イスラームは、アラビアの預言者ムハンマドのよって創設された宗教で、創世主である全能の唯一神アッラー(Allah)を信仰し、クルアーン(Qur'an)を聖典としています。イスラム教徒は、①唯一神アッラーを信じ②1日に5度メッカ(サウジアラビアにある)に向かって礼拝し③ラマダンの月(イスラム歴の9月)に断食をし④喜捨(貧者への施し)を行い⑤一生に1度メッカに巡礼するという5行が信仰行為として定められています。
宗派には、スンニ(スンナ)派、シーア派などがあります。
このうち、スンニ派は、イスラムの中の多数派(イラクでは少数派)で、全体の9割を占めています。スンナは、アラビア語で慣習の意味で、スンニ派は、預言者の慣行に従う人たちの意味になり、共同体の合意を重視し、預言者ムハンマドの後継者として歴代カリフを受け入れる立場をとっています。少数派のシーア派とは対立関係にあります。
シーア派は、イスラムの中の少数派(イラクでは多数派)で、預言者ムハンマドの死後、その女婿で従弟のアリーをイスラム共同体の正統な長(イマーム)とし、その地位は、その後代々アリーの子孫に継承されるべきと主張する人々がアラビア語でシーア・アリー(アリー党)と呼ばれ、のちにアリーをとってシーアと呼ばれるようになりました。
スンニ派は、ムハンマドやカリフ(後継指導者)を人間とみなすのに対し、シーア派は、指導者を絶対的な判断を下すイマームと呼び、神格化しています。しかし、両派の教義には大きな差はないといわれています。

イラク・シリアのイスラム国(ISIS=The Islamic State of Iraq and Syria)は、イスラム国家の樹立を掲げるスンニ派の武装組織で、イラク戦争後にアルカイダ系の反米勢力が合流してできた「イラク・イスラム国(ISI)」が、2011年に始まったシリア内戦に介入して改名しました。勢力は、数千人といわれています。イラク北部やシリア東部を拠点とし、シーア派市民をねらった無差別テロを繰り返しています。

クルド人(Kurds)は、イラン語系のクルド語を話し、多くは、イスラム教スンニ派ですが、一部にシーア派もいます。クルド人居住地域は、イラク、イラン、トルコに分断されています。全体で2000万人以上いるといわれています。イラクの北部では、イラク戦争後、クルド自治政府による自治が拡大し、経済的にも発展しています。しかし、石油採掘権や利益分配をめぐってイラク政府との間で軋轢が生じています。

(c)英語のニュース

U.S. President Barack Obama says that the United states is ready to send up to 300 military advisers to Iraq where heavy fighting continues between government forces and Islamist militants.
At a news conference on Thursday, he also said that the United States is preparing to create joint operation headquarters with Iraq in Bagdad and norther Iraq.
Mr. Obama said that the United States is ready to take "targeted and precise military action" in Iraq if and when the situation on the ground requires it.
He stressed that U.S. forces will not be returning to combat in Iraq and said that the United States will pursue dipomatic efforts with leaders of Iraq and neighboring nations.
Mr. Obama called on Iraqi Prime Minister Nuri al-Maliki's government to overcome sectarian and ethnic divides and make his government more inclusive.
The U.S.government has criticizing Prime Minister Maliki - a Shia - of instigating Sunni insurgency by favoring majority Shias and maginalizing minority Sunnis.

Meanwhile, in Iraq, heavy fighting continues between government forces and Islamist militants of the ISIS - the Isramic State of Iraq and Syria.
The Sunni insurgents are advancing south toward the capital city of Bagdad after they took control of Iraq's second largest and northern city of Mosul last week. They reached a city some 50 kilometers north of Bagdad. They also attacked Iraq's biggest oil refinery in Baiji,northern Iraq.
Iraqi government forces are fighting to try to repel the offensive in various parts of northern and western Iraq. They are stepping up air attack in these regions.

(d)ニュースの比較研究

イラクでの戦闘が激化する中で、アメリカのオバマ大統領がイラクへ最大300人の軍事顧問を派遣すると発表したニュースについては、日本のメディアも外国のメディアも大きく報道しました。焦点は、オバマ大統領が再びイラクの軍事介入に踏み切るかどうかsaid Thursday that、あるいは、イラクの空爆に踏み切るかどうかでした。
アメリカのメディアの報道を紹介しましょう。

アメリカの『The New york Times』紙は、"United States to Send Military Advisers to Iraq"(アメリカ、イラクへ軍事顧問派遣へ)という見出しで、"President Obama said Thursday that the United States would deploy up to 300 military advisers to Iraq to help its beleaguered security forces fend off Sunni militants, edging the United States back into a conflict that Mr. Obma has had left behind"
(オバマ大統領は、イラクに最大で300人の軍事顧問を展開すると発表した。これは、敵に包囲されたイラク政府の治安部隊がシーア派の過激派から逃れるのを助けるためのものだが、アメリカをオバマ大統領が背後に残してきた戦争に戻るぎりぎりのところに置くものだ)と報じました。

アメリカの『The Washington Post』紙は、"Obama announces he is sending up to 300 troops back to Iraq as advisers"(オバマ大統領、イラクへ再び最大で300人の兵を顧問として派遣すると発表)という見出しで、"President Obama announced Thursday that he is sending up to 300 U.S. troops to Iraq to help Iraqi military forces deal with an onslaught by radical Islamist fighters inspired by al-Qaeda"(オバマ大統領は、イラクに300人のアメリカ兵を派遣すると発表した。これは、イラク政府軍がアルカイダ系のイスラム過激派武装集団による猛攻撃に対抗するのを助けるためだ)と報じました。

アメリカの『CNN(=Cable News Network)』放送は、"Obama says 'small number ' of military advisers going to Iraq"(オバマ大統領、イラクへ’少数’の軍事顧問派遣と言明)という見出しで、"Speaking a middle ground between calls for tough military action and none at all, President Barack Obama said Thursday he was sending up to 300 military advisers to Iraq to help the embattled government hold off lightning advance from the north by Sunni militants"(オバマ大統領は、きびしい軍事行動の呼びかけと全くそうでない呼びかけの間の中間的な立場を述べて、イラク政府軍がスンニ派の過激派による北からの攻撃に対抗するのを助けるために、最大で300人の軍事顧問をイラクに派遣すると言明した)と報じました。












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