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750.安倍首相、消費増税延期発表ー2016.6.2 [政治・経済]

*2016.6.4の荻窪のテキスト*

(a) 日本語のニュース

安倍首相は、1日、通常国会の閉幕を受けて記者会見し、2017年4月に予定していた消費税率8%から10%への引き上げを2019年10月まで2年半再延期することを正式に表明しました。同時に、夏の参議院選挙を6月22日公示、7月10日投票とする方針を示し、消費増税の再延期の判断については、参議院選挙で国民の信を問うと述べました。
消費増税の延期は、当初の2015年10月から1年半延ばした2014年11月の決定に続き2回目で、安倍首相は、その際に「再延期はない」と断言していたことについて、「これまでの約束と異なる判断だ。『公約違反ではないか』との批判を真摯に受け止める」と語りました。
安倍首相は、消費増税の再延期を判断した理由について、当初から延期するケースとして挙げていたリーマン・ショック級の事態は発生していないとする一方、「新興国や途上国の経済が落ち込んでおり、世界経済が大きなリスクに直面している」と説明し、世界経済が新たな危機に陥ることを回避するため、内需を腰折れさせかねない消費税率の引き上げは延期すべきだと判断した」と述べるとともに、このため、政策総動員が必要だと強調しました。
安倍首相は、秋の臨時国会に公共事業などを柱とする大規模な補正予算案を提出する方針を表明し、消費増税を先送りするための関連法案を提出する考えも示しました。
安倍首相は、消費増税による税収を財源としていた社会保障の充実については、「保育士、介護職員の処遇改善など1億総活躍プランの関連施策を優先的に実施する」と説明し、「しかし、赤字国債を財源に社会保障の充実を行うような無責任なことはしない」とも述べました。
安倍首相は、消費増税を再延期しても「財政再建の旗は降ろさない」と述べ、基礎的財政収支の赤字を2020年度に黒字化する財政健全化の目標は堅持する考えを強調しました。
消費増税の再延期については、「国政選挙である参議院選挙を通し、国民の信を問う」とし、参議院選挙に合わせて衆議院選挙を実施する衆参同日選挙については、熊本地震への配慮などを理由に見送る意向を示しました。
安倍首相は、参議院選挙について、「目指すのは、自民、公明の連立与党で改選議席の過半数を獲得ることだ」と述べました。これは、改選議席数121のうち、自民、公明両党で61議席を目標とするというもので、現有議席の自民50議席、公明9議席を2議席上回ることになります。
7月の参議院選挙では、安倍首相の消費増税再延期の判断の是非やアベノミックス=安倍首相の経済政策の成否、集団的自衛権行使を認めた安全保障関連法が主要な争点になるものとみられています。さらに、憲法改正の国会発議に必要な定数の3分の2以上の議席を改憲勢力が確保できるかどうかも注目されています。

(b)ニュースの背景

消費税というのは、モノやサービスを取引する際にかかる税金のことで、実質的な負担者は、消費者ですが、小売店やメーカーといった事業者が実際には消費税を納めています。勤労世代など特定の人に負担が集中せず、高齢者を含めて国民全体で幅広く負担しています。法人税や所得税に比べて、税収が景気動向に左右されにくく、安定財源の側面をもっています。
日本では、1989年4月に3%の消費税が、初めて導入されました。1997年4月に税率が5%に上がり、2014年4月には8%になりました。
2016年度の消費税収は、およそ17兆2000億円の見通しで、一般会計税収のおよそ3割を占めています。税率が8%上がったことで、消費税の税収規模は、およそ18兆円ある所得税に匹敵する規模になっています。
消費税が増税する理由は、高齢化で、社会保障費が増大しているためです。消費税の税収は、年金、介護、医療などの社会保障サービスや子育て支援に充てるのがルールになっています。税収が増えれば、サービスも拡充できることになります。
海外では、売り上げ税、付加価値税などと呼ばれ、社会保障が充実しているスウェーデンやデンマークは、25%と高率です。イギリスは、金融危機後の2009年に17.5%から15%に下げた後、20%に引き上げました。食料品などの税率を低くする軽減税率もあり、増税への反発もそれほど強くないといわれています。

(c)英語のニュース

Japanese Prime Minister Shinzo Abe has announced that he will postpone the scheduled hike of the country’s consumption tax to October 2019 from April 2017.
Speaking at a news conference on Wednesday, he pointed to growing uncertainties in the global economy and noted that prices of commodities have plunged and investment has dropped, hurting emerging and developing economies significantly.
Mr. Abe explained that he decided to postpone the consumption tax hike as it could stifle domestic demand and lead to a crisis.
Mr. Abe also announced that the Upper House election will be held on July 10th. And he said that he will seek voter judgement on the new decision in the election.
Mr. Abe said that the ruling bloc – the Liberal Democratic Party and the KOMEITO – aims to win a majority of the 121 seats up for election.

(d)ニュースの比較研究

安倍首相の記者会見のニュースについては、日本のメディアは、一様に見出しは、「消費税率10%引き上げ2年半延期を表明」でした。『読売』が、「消費税10% 19年10月」、『日経』が、「消費増税延期を表明」、『産経』が、「増税再延期「新しい判断」」、『朝日』が、「首相、消費増税19年10月表明」、『毎日』が、「首相「約束と異なる判断」増税再延期を表明」、『東京』が、「首相、消費増税再延期を表明」、『共同』が、「首相、消費増税延期を表明」、『NHK』が、「首相、会見で消費税率引き上げ2年半再延期を表明」という見出しでした。ニュースの本記は、横並びで、安倍首相の発言内容を中心に伝えたものでした。一方、外国のメディアも、安倍首相の記者会見を報道していましたが、ニュースの本記で、アベノミックスが困難に直面していることをきちんと報道している点が、日本のメディアとの大きな違いでした。
主なメディアの報道を紹介しましょう。

アメリカの『The Wall Street Journal』紙は、”Japan’s Delayed Tax Increase Shows ‘Abenomics’ Is Sputtering – Prime Minister Shinzo Abe blames slowing emerging markets for weakness in economy, pledges to ‘rev up’ engine”(日本の増税延期は、’アベノミックス‘が行き詰まっていることを示している - 安倍首相は、経済のぜい弱さは、新興国の市場が減速しているからだと不平をいい、エンジンをふかすと約束した)という見出しで、”When he took office, Prime Minister Shinzo Abe vowed to restore Japan’s economy to robust health and win the country’s long battle with deflation. Wednesday’s decision by Mr. Abe to put off a planned tax increase is a stark signal that he hasn’t delivered yet, and it isn’t clear when he can. The move risks making it harder for Japan to lighten its enormous debt burden”(安倍首相が就任した時、日本の経済に確固とした健全さを取り戻し、日本の長いデフレとの戦いに勝つことを誓った。しかし、今回の安倍首相による増税計画の延期は、彼がまだそのことを果たしておらず、いつできるかもはっきりしないということをはっきり示している。この動きは、日本が膨大な債務を軽くするのをさらに難しくしている)と報じました。

アメリカの『The New York Times』紙は、”Abe to Delay Putting Japan’s Sales Tax Increase Into Effect”(安倍首相、日本の売上税の増税を有効にすることを延期)という見出しで、”Prime Minister Shinzo Abe of Japan announced on Wednesday that he would delay an unpopular increase in the national sales tax, in what amounted to an acknowledgement that the country’s economy remained worryingly fragile. The decision, which was widely expected, was informed by painful experience: After Mr. Abe allowed a tax increase to go ahead in 2014, consumer spending dried up and Japan fell into recession. It was a serious setback for a leader who had won office on a promise to turn around Japan’s long-struggling economy”(日本の安倍首相は、不人気な売り上げ税の引き上げを延期すると発表した。このことは、日本の経済が、依然として心配なほど脆弱であるという認識と同じことだ。この決定は、広く予想されていたことで、にがい経験を伴っている。安倍首相は、2014年に消費増税を実施した後で、消費は冷え込み、日本は景気後退に陥った。日本の経済をよくすると約束して首相の座を勝ち取ったリーダーにとっては、ひどい後退であったのだ)と報じました。

イギリスの『FINANCIAL TIMES』紙は、”Japan’s Shinzo Abe admits deflation fears with sales tax delay”(日本の安倍首相、売り上げ税延期でデフレの恐れを認める)という見出しで、”Shinzo Abe has doubled down on his huge economic stimulus, delaying a rise in consumption tax as he was forced to admit that the spectre of deflation still looms large over Japan’s economy. The delay is embarrassing for the Japanese prime minister, showing that more than three years after he came to power, Japan’s economy is still not strong enough to tackle chronic budget deficits. But rather than abandoning his original “three arrows” of monetary easing, fiscal stimulus and structural reform, Mr. Abe is making the world’s stimulus package ever bigger”(安倍首相は、巨大な経済刺激策を倍増し、消費税増税を延期した。というのは、安倍首相は、デフレの影が依然として日本の経済の上を大きく覆っていることを認めざるをえないからだ。消費増税の延期は、日本の安倍首相にとって困惑させるもので、安倍首相が就任して3年以上たつのに、日本の経済は、長期にわたる予算の赤字に取り組むには十分強くないということだ。しかしながら、安倍首相は、彼のもともとの金融緩和、財政刺激、構造改革の3つの矢を放棄することよりもむしろ世界の一括刺激策をより大きなものにしようとしているのだ)と報じました。

イギリスの『REUTERS』通信は、”Japan PM delays sales tax hikes, puts fiscal reform on back burner”(日本の首相、売り上げ税増税を延期し、財政改革をなおざりにする)という見出しで、”Japanese Prime Minister Shinzo Abe announced on Wednesday his widely expected decision to delay a scheduled sales tax increase by two-and-a-half years, putting his plans for fiscal reforms on the back burner due to growing signs of weakness in the economy”(日本の安倍首相は、売り上げ税の増税の計画を2年半の延期の決定を発表した。それは、経済の弱さが現れてくる兆しの故に、財政改革の計画をなおざりにしようとするものだ)と報じました。

ドイツの『Deutshe Welle』放送は、”Abe delays plan for tax hike in Japan”(安倍首相、日本の増税計画を延期)という見出しで、”Japan’s prime minister Shinzo Abe will delay a controversial increase in sales tax due to concerns for the country’s fragile economy. The move is a blow to his economic policy aimed at boosting growth and inflation”(日本の安倍首相は、日本のぜい弱な経済のための懸念から、問題の売り上げ税増税を延期する。この動きは、成長とインフレを押し上げようとする彼の経済政策にとって打撃だ)と報じました。

フランスの『AFP(=Agence France Presse)』通信は、”Japan PM delays tax hike in blow for Abenomics”(日本首相、増税延期、アベノミックスに打撃)という見出しで、”Japanese Prime Minister Shinzo Abe on Wednesday said that he would delay a sales tax hike that threatened to derail the fragile economy, but analysis said that it highlighted the failure of his years-long efforts to spark growth”(日本の安倍首相は、脆弱な経済をだめにしてしまうような、売り上げ税の増税を延期すると発表したが、それは、成長に火をつけようとする彼の何年もかけた努力の失敗を意味するものだ)と報じました。

中国の『Xinhua(新華社)』通信は、”Spotlight: Abenomics on ropes amid repeated delays of sales tax hike”(焦点:アベノミックス、売り上げ税増税再延期で、ロープに追いつめられる)という見出しで、”The cabinet of Japanese Prime Minister Shinzo Abe on Tuesday survived a no-confidence motion thanks to the majority of seats secured by the Abe-led ruling bloc in the lower house of the parliament. Abe’s real trouble, however, lies in the de facto failure of his economic policy, dubbed Abenomics. He is expected to announce the postponement again of a planned hike in sales tax rate on Wednesday, in fear that it may harm consumer sentiment if it is raised as planned”(日本の安倍首相の内閣は、衆議院で与党が過半数の議席を確保しているおかげで、内閣不信任案を否決し、生き残った。しかしながら、安倍首相の真の難題は、アベノミックスといわれる、彼の経済政策の事実上の失敗にあるのだ。安倍首相は、売り上げ税率の引き上げの再延期を発表することになっており、それは、計画通り引き上げると、消費者心理を傷つける恐れがあるからだ)と報じました。

















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692.自民、公明両党、軽減税率で合意ー2015.12.13 [政治・経済]

(a) 日本語のニュース

与党の自民、公明両党は、2017年4月消費税を8%から10%に引き上げる時に国民の税の負担を一部軽くする軽減税率について協議を重ねてきましたが、12日に酒類と外食を除く食品すべてを対象に消費税を8%に据え置くことで合意しました。
自民、公明両党の合意によりますと、生鮮食品、加工食品を含む食品全般を消費税の軽減税率の対象とする、ただし、酒類と外食は対象外とする、これに伴うおよそ1兆円の税収減を埋める財源については、「2016年度末までに歳入・歳出で法制上の措置を講ずる」とし、財源確保の議論は、事実上先送りし、一方で財政健全化の目標は堅持するとしています。
また、軽減税率の導入に伴う経理方式については、商品ごとに税率や税額などを
細かく記す「インボイス」(適格請求書)を2021年4月から導入する、それまでは現在の請求書を利用する簡易な方式を認め、事業者の負担を減らすことを決めました。
もともと消費税の軽減税率は、低所得層の家計の負担を和らげるのが目的ですが、今回の自民、公明両党の合意のように、十分な財源の裏付けもないままに、およそ1兆円の財源が必要な規模にまで広がったことは、財政健全化目標との整合性との関連で、大きな課題を抱えたことになります。

(b)ニュースの背景

消費税の軽減税率というのは、生活必需品などに限定し標準税率より低い税率を適用する軽減制度のことです。本来は、低所得者ほど所得に占める税負担の割合が重くなる逆進性の緩和が狙いで、自民、公明両党は、すでに消費税を10%に引き上げる時に軽減税率を導入することで合意しています。日本の消費税に当たる付加価値税を採用している欧州諸国では、EU=欧州連合28か国のうち21か国が軽減税率を導入していますが、区分けや税率は国によって違いがあります。例えば、食料品や新聞・書籍などにドイツは7%(標準税率は19%)、イギリスは0%(同20%)を適用しています。また、ドイツでは、ハンバーガーを食べる場所によって軽減税率が違い、店内で食べると外食とみなされ消費税は19%かかり、テイクアウトすると食料品とみなされ消費税は7%になります。
しかし、軽減税率については、対象の線引きが難しく、販売業者の経理が複雑になるなどの問題点もあります。
今回の軽減税率をめぐる自民、公明両党の協議の背景には、来年夏の参議院選挙を控えているという政治状況があります。

(c) 英語のニュース

Japan’s ruling coalition has agreed to apply a reduced tax rate to
food and drinks, excluding alcohol and dining out, when the consumption tax is raised from 8 percent to 10 percent in April 2017.
The agreement was reached between the ruling Liberal Democratic Party and its coalition partner, Komeito on Saturday.
The move to keep the tax rate on those items unchanged at 8 percent will lower the government’s annual tax revenue by one trillion yen or 8.3 billion US dollars.
The two parties agreed to secure funding sources to cover the revenue shortfalls by the end of fiscal 2016 which runs through March 2017.
The parties said that they will look for funding sources while sticking to the government’s fiscal reconstruction goal of achieving a primary budget surplus by fiscal 2020.

(d) ニュースの比較研究

自民、公明両党が消費税の軽減税率で合意したニュースについては、日本のメディアは、トップ・ニュースとして大きく報道しましたが、外国のメディアは、いまのところ報道していません。


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