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688.トルコ、ロシア機撃墜ー2015.11.25 [国際ー中東、ロシア、アメリカ、ヨーロッパ]

*2015.11.28の阿佐谷のサロンのテキスト*

(a) 日本語のニュース

トルコ軍がトルコとシリアの国境付近で、ロシア軍機を撃墜した事件で、トルコとロシアは、それぞれ相手方を非難し、両国の間で緊張が高まっています。
トルコ軍は、24日、トルコ領空を侵犯したとして、ロシア軍の爆撃機1機を撃墜したと発表しました。機体は、トルコ国境に近いシリア北部に落ちたということです。
トルコのエルドアン大統領は、「トルコが自国の国境を守ることは各国が尊重しなければならない。ロシアの爆撃機がたび重なる警告を無視して領空侵犯を続けたため撃墜したもので正当な判断だ」と述べました。
これに対して、ロシアのプーチン大統領は、ロシア軍機は領空侵犯していないと強調したうえで、「テロリストの手先がロシア軍機を背後から襲った。裏切り行為だ」とトルコを激しく非難し、「2国関係に深刻な影響を与えるだろう」と警告しました。

一方、アメリカを訪れていたフランスのオランド大統領とオバマ大統領は、24日ホワイトハウスで会談し、過激派組織「イスラム国」への空爆を強化する方針で一致するとともに、トルコ軍によるロシア軍機撃墜事件について、緊張の高まりを避けるため両国に対話を促しました。
オランド大統領は、26日には、モスクワで、ロシアのプーチン大統領と会談することになっています。

(b) ニュースの背景

「イスラム国」というのは、2014年6月イスラム教スンニ派の過激派組織「イラク・シリア・イスラム国(ISIS=Islamic State of Iraq and Syria(al-Sham大シリア)」は、シリア北部からイラク中部にまたがる地域に「イスラム国(IS=Islamic State)」の樹立を宣言、最高指導者アブ・バクル・バグダディを世界のイスラム共同体を率いるカリフ(預言者ムハンマドの後継者)と仰ぐ政教一致国家だと主張しました。しかし、国際社会は、「イスラム国」を独立国家とは認めず、イスラム諸国もこれを認めず、危険視しています。(ISISは、ISIL=Islamic State of Iraq and the Levantとも呼ばれています。Levantとは、レバント地方=エーゲ海および地中海東岸の地方で、シリア、レバノン、イスラエルの地域のことです)
アメリカの情報によりますと、ISの戦闘員は、およそ2万人で、このうち外国人は、5000人とみられています。
2014年8月アメリカ主導の有志連合(Coalition of the willing)は、ISの支配地域に空爆を開始しました。現在空爆に参加しているのは、アメリカ、フランス、カナダ、デンマーク、オランダ、トルコ、ヨルダン、サウジアラビアなどです。
一方、ロシアは、2015年9月シリア政府の要請を受けて、「IS=イスラム国」掃討の名目でシリア領内のISの支配地域への空爆を開始しました。ロシアは、もともとシリアの内戦では、アサド大統領の政権を支持している立場で、空爆もアサド政権に敵対している反政府勢力を標的にしているといわれています。特にトルコのエルドアン政権は、ロシア軍機が最近しばしばトルコの国境を侵犯しているほか、シリア北部ではトルコ人が「同胞」とみているトルコ系トルクメン人の居住地域をたびたび空爆したとして反発を強めていました。一方、ロシアのプーチン大統領は、「IS=イスラム国」の資金源である石油や石油製品の密売にトルコが関わっていると非難しています。
また、今月中旬パリで起きた同時多発事件をきっかけに、アメリカ、フランス、トルコなどの有志連合とロシアが連携して、「IS=イスラム国」の壊滅を目指そうとする動きが強まっていましたが、今回の事件をきっかけに、トルコとロシアの関係が緊張し、その包囲網の形成に乱れが生じる懸念が出ています。

(c)英語のニュース

Tension between Turkey and Russia is heightening, as Turkey has shot down a Russian warplane near the border between Turkey and Syria.
The Turkish military says that a Russian warplane was violating Turkish airspace near the border with Syria on Tuesday and the warplane were warned 10 times. And Turkish fighter jets shot down the Russian warplane.
Turkish President Recep Tayyip Erdogan defended the shooting down of the Russian warplane as the right decision, arguing that the Russian pilots ignored warnings repeatedly and stayed in Turkish airspace.
He criticized Russia for conducting airstrikes near the Turkish-Syrian border, saying that the areas in question are inhabited by Turkish people and have nothing to do with Islamic State militants.
However, Russian President Vladimir Putin insisted that the Russian war plane didn’t violate Turkish airspace. He described the downing of the plane as a “stab in the back” committed by “accomplices of terrorists” Mr. Putin warned that the incident would have serious consequences for Moscow’s relations with Ankara.

Meanwhile, in Washington, U.S. President Barack Obama and French President Francois Hollande had talks. They agreed to jointly strengthen air strikes against the Islamic State militants. The two leaders also urged Turkey and Russia to take steps to avoid any escalation of the situation following the downing of a Russian war plane by the Turkish military.

(d)ニュースの比較研究

トルコがシリアとの国境付近でロシア軍機を撃墜したというニュースについては、世界のメディアは、衝撃をもって報道しました。ロシア軍機の撃墜は異例の出来事だったからです。事件が拡大しないことを願う論調が多かったと思います。
代表的なメディアの報道を紹介しましょう。

中東・カタールの『Aljazeera』放送は、”Turkey and Russia in war of words over downed jet”(トルコとロシア、撃墜されたジェット機をめぐって論戦)という見出しで、 “Turkey, Russia and their respective allies have entered a war of words about the downing of a Russian warplanes near the Turkey-Syria border – raising tensions in a region struggling to cope with the ongoing Syrian conflict”(トルコ、ロシアとそれぞれの同盟国は、トルコとシリアの国境近くでのロシア機の撃墜事件をめぐって、論戦に入った。それは、現在続いているシリアの内戦に対応するために競っている地域における緊張を高めることになる)と報じました。

イギリスの『BBC(=British Broadcasting Corporation)』放送は、”Turkey downing of Russian jet’ stab in the back’ – Putin”(プーチン、トルコのロシア機撃墜は、’背中を刺す‘ようなものだと非難)という見出しで、Russian President Vladimir Putin has bitterly condemned the downing of a Russian jet on the Turkey-Syria border. He described it as “a stab in the back” committed by “accomplices of terrorists”. Turkey says that its jets shot at the plane after warning that it was violating Turkish airspace. But Moscow says it never strayed from Syrian airspace。(ロシアのプーチン大統領は、トルコとシリアの国境でのロシアのジェット機の撃墜を激しく非難した。彼は、それを“テロリストの共犯者が背中を刺したようなものだ”と述べた。トルコは、ロシア機がトルコの領空を侵犯したと警告した後で、トルコ軍のジェット機がロシア機を撃墜したと発表している。しかし、ロシアは、ロシア機は、絶対にシリアの領空からはずれていないといっている)と報じました。

アメリカの『The New York Times』紙は、”Turkey Shoots Down Russian Warplane Near Syrian Border”(トルコ、シリアとの国境近くでロシア機撃墜)という見出しで、”Two big powers supporting different factions in the Syrian civil war clashed with each other on Tuesday when Turkish fighter jets shot down a Russian warplane that Turkey said had strayed into its airspace. The tensions immediately took on Cold War overtones when Russia rejected Turkey’s claim and Ankara responded by asking for an emergency NATO meeting, eliciting more Russian anger and ridicule. After the meeting, the NATO secretary general, Jens Stoltenberg, called for “calm and de-escalation” and said that the allies “stand in solidarity with Turkey”(トルコの主張によれば、トルコの領空に侵入したロシア機をトルコのジェット戦闘機が撃墜した時に、シリアの内戦で違うグループを支持している2大国(アメリカとロシア)は、お互いに衝突した。その緊張は、ただちに冷戦の様相を呈した。ロシアは、トルコの主張を拒否し、トルコは、それに応えて、NATO=北大西洋条約機構の緊急会議の開催を求めた。それは、ロシアのさらなる怒りとあざけりを誘発した。NATOの緊急会議の後、ストルテンベルグNATO事務総長は、”冷静さとデスカレーション(紛争が拡大しないこと)“を訴え、NATOの同盟国は、”トルコと連帯している“と述べた)と報じました。




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