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907. フランスの総選挙で、マクロン大統領の新党過半数制すー2017.6.21 [国際ーヨーロッパ]

(a) 日本語のニュース

フランスの総選挙でマクロン大統領の新党「共和国前進」が単独で過半数を制し、連携する中道政党と合わせますと、下院577議席のうち6割の350議席を獲得し勝利を収めました。
フランス内務省が18日発表したところによりますと、5月に就任したマクロン大統領の率いる新党「共和国前進」が308議席を獲得して単独で過半数を制し、連携する中道政党の「民主運動」の42議席と合わせて下院577議席の6割の350議席を獲得しました。
これまで政権を交互に担ってきた中道右派の共和党は113議席、中道左派の社会党は29議席と大幅に議席を減らし、極右政党・国民戦線は、さきの大統領選挙でマクロン氏と決選投票で争った党首のルペン氏を含め8議席にとどまりました。
今回の投票率は、これまでで最低の42.6%にとどまりました。
マクロン大統領は、総選挙の結果、支持勢力が過半数の議席を獲得したことで、政権基盤を固め、公約に掲げたEU=欧州連合の統合強化や経済改革などの実現へ足場を築いたことになります。
しかし、新党から当選した議員は、マクロン氏の政治運動に共鳴したものが多く、政治経験のない新人が多いとみられ、不慣れな議会運営や急造の政権内の派閥抗争などを懸念する声もあり、マクロン氏の政治手腕が問われることになります。

(b) ニュースの背景

フランスの政治体制
・憲法―大統領に強大な権限を与え、第5共和制(1958年ドゴール大統領が発足)は、第4共和制に比べて議会の権限が制限れています。憲法改正の発議権は大統領と議会に属し、両院一致の条文で議決され、国民投票を経て改正されます。大統領が改正案を両院合同会議に付託した場合は、国民投票を行わず、合同会議の有効投票の5分の3以上の賛成で承認されます。
・元首―大統領。直接選挙で選ばれます。第1回投票で過半数を取得した候補がない場合には、上位2人で決選投票が行われます。首相の任免権、首相を通じての閣僚任免権、下院解散権、国民投票の施行権を持っています。非常時には独裁的権限も行使できます。
5月に行われた大統領選挙の決選投票では、中道で無所属のマクロン氏39歳が当選しました。マクロン候補の有効投票での得票率が66.10%、極右政党のルペン候補が33.90%でした。。
大統領の権限が強化された1956年から始まった第5共和制で、左右2大政党以外からの大統領は初めてで、フランス史上最年少の大統領です。
・議会―下院の国民議会(Assemblee Nationale)と上院(Senat)からなっています。
国民議会は、定数は577。 18歳以上の有権者による投票で、選挙制度は、1区1人選出の小選挙区制です。有効得票の50%超かつ登録有権者の25%以上の得票を得た候補がいない場合は、登録有権者の12.5%以上の得票を得た候補による決戦を行う2回投票制になっています。
今回は、6月11日に1回目の投票、6月18日に2回目の投票が行われました。
上院は、定数は348.下院議員や県会議員、市町村代表らによって構成される選挙人団による間接選挙で、3年ごとに半数を改選します。
・政党―共和国前進、共和党、社会党などがあります。
共和国前進(La Republique En Marche!)は、前身が前進(En Marche!)で、前進は、大統領になったマクロン氏が2016年4月設立した政党政界刷新のための政治運動ことで、政治的立場は、中道で、政治的思想は、社会自由主義、親欧州主義、第3の道、経済的自由主義、新自由主義です。2017年5月党名を共和国前進に変更しました。

(c) 英語のニュース

French President Emmanuel Macron’s new party has won a majority in the Lower House of Parliament as a result of the final round of elections.
The party - the Republic on the Move - won 308 seats of the 577-seat Lower House – the National Assembly The party, plus its allies, Democratic Movement, took 350 seats.
The comfortable majority of Mr. Macron’s party and its allies has been a big blow to traditional parties on both the left and right. The center-right Republican Party took 137 seats and the center-left Socialist Party gained 45 seats. The far-right National Front took 8 seats, including the seat for party leader Le Pen.
The voter turnout was a record low of 42.6%.
The result of the elections has swept aside all of the mainstream parties and gives the 39-year-old President a strong mandate in Parliament to pursue his pro-EU, business-friendly reform plans.

(d) ニュースの比較研究

フランスの下院・国民議会選挙は、大統領選挙で勝利したマクロン氏の陣営が優勢を伝えられ、1週間前までは、議席全体の7~8割を占める可能性があるという世論調査がでていましたが、ふたを開けてみると、6割、さらに投票率は、有権者の半数を割り、これまでで最低という結果でした。
ヨーロッパのメディアの報道を紹介しましょう。

フランスの『AFP(=Agence France Presse)』通信は、”Macron marches to clear majority in French Parliament”(マクロン大統領、フランス議会で過半数獲得へ)という見出しで、”French President Emmanuel Macron’s central party swept to a large majority in parliamentary elections on Sunday although it felt short of projected landslide. Macron’s year-old Republique en Marche(Republic on the Move, REM) and their allies won 351 seats in the 577-seat National Assembly, final results showed after the second round of an election which has eliminated many high-profile figures”(フランスのマクロン大統領の中道の政党は、議会選挙で、予想されていた地滑り的勝利ではなかったが、優に過半数を制した。2回目の投票の最終結果によれば、マクロン氏の政党「共和国前進」とその連携する政党は、国民議会577議席のうち351議席を獲得した。この選挙では、多数の大物候補が落選してしまったのだ)と報じました。

フランスの『FRANCE 24』放送は、”Macron completes electoral grand slam amid record-low turnout”(マクロン大統領、議会選挙で投票率最低にもかかわらず大勝)という見出しで、”French President Emmanuel Macron wrapped up his extraordinary string of electoral victories on Sunday as his fledgling new party picked up a large majority of seats in legislative polls marred by the lowest turnout on record. The takeover is complete. Just over a month after his stunning election to the Elysee Palace, France’s youngest-ever president has guided his party to a huge win in legislative polls, crushing the old parties of left and right that have dominated French politics for decade”(フランスのマクロン大統領は、特別な一連の勝利を収めた。それは、(大統領選挙に次いで)議会の選挙で、過去最低の投票率ではあったが、発足したばかりの彼の政党が優に過半数を制し大勝したからだ。その勝利は完全だった。フランスの史上最も若い大統領は、大統領選挙で驚くべき勝利を収めてから1か月あまりで、彼の政党を議会選挙で大勝に導いたのだ。何十年もフランスを支配していた左翼、右翼の政党を打ち破ってしまったのだ)と報じました。

ドイツの『Deutsche Welle』放送は、”French President Emmannuel Macron’s LREM party wins majority in parliament”(フランスのマクロン大統領の政党「共和国前進」、議会で過半数制す)という見出しで、”French President Emmanuel Macron’s LREM party has won a large majority in parliamentary elections which will enable it to push through reforms. But there was a record, low turnout”(フランスのマクロン大統領の政党「共和国前進」は、議会選挙で優に過半数を制した。それは、改革を推し進めることができるものだ。しかしながら、投票率は、これまでで最低だった)と報じました。

イギリスの『BBC(=British Broadcasting Corporation)』放送は、”France polls: Marcon’s party wins clear parliamentary majority”(フランスの総選挙の投票結果:マルコン大統領の政党、議会で過半数制す)という見出しで、”French President Emmanuel Marco’s party has won a clear parliamentary majority, results show, weeks after his own presidential victory. With nearly all votes counted, his La Republique en Marche, alongside its MoDem allies, won more than 300 seats in the 577-seat National Assembly”(フランスの総選挙の結果によれば、フランスのマクロン大統領の政党は、大統領選挙での勝利に続いて、議会でも過半数を制した。投票の結果がほぼ出そろって、「強国前進」は、「民主運動」とともに、国民議会の577議席のうち、300議席以上を獲得した。





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898.英マンチェスターで自爆テロ22人死亡、テロ警戒レベル最高にー2017.5.24 [国際ーヨーロッパ]

(a)日本語のニュース

イギリスの中部マンチェスターで22日自爆テロが起こり、22人が死亡した事件で、メイ首相は、23日、テロ警戒レベルを1段階引き上げ、5段階の最高レベルにしたと発表しました。
イギリスの中部マンチェスターで22日夜、アメリカの人気歌手アリアナ・グランデさんのコンサート終了直後、会場の付近で大きな爆発が起き、これまでに22人が死亡し、64人がけがをしました。犠牲者には8歳の女の子のほか10代の若者が多く含まれているということです。
警察は、事件をサルマン・アベディ容疑者22歳による自爆テロとみています。アベディ容疑者は、リビア出身の両親のもとイギリスで生まれた移民2世で、地元の大学に通っていたと伝えられています。
過激派組織「IS=イスラム国」が事件の関与を主張する犯行声明をだしているところから、警察は、関係先を捜査しています。
イギリスのメイ首相は、23日テロの警戒レベルを「危険が差し迫っている」とする5段階の最高レベルに引き上げ、厳重な体制をしいています。イギリスで警戒レベルを最高レベルに引き上げたのは、10年ぶりのことです。

(b)ニュースの背景

マンチェスター(Manchester)は、イギリスの中部にあり、ロンドンの北西およそ260キロのところにあり、18~19世紀の産業革命で工業都市として栄えましたが、戦後衰退し、近年は、金融などのほかメディア産業の拠点がおかれています。今回の自爆テロが起こったのは、市の中心部にあるイベント会場「マンチェスター・アリーナ」で、マンチェスター・ビクトリア駅に隣接しています。

アリアナ・グランデ(Ariana Grande)は、アメリカのシンガーソングライター、女優。1993年生まれ、23歳。アルバム『Yours Truly』『My Everything』『Dangerous Woman』、シングル『The Way』『Problem』など。今回のツアーは、イギリスのあと、ヨーロッパなどを回り、8月には千葉県の幕張メッセでも予定されています。親日家としても知られ、日本語を勉強していると自らのツィッターに書いています。

(c)英語のニュース

British Prime Minister Theresa May has announced that her government has raised the country’s terror threat level to the highest level of critical in the wake of the suicide bombing at a concert hall in Manchester.
She made the announcement on Tuesday. So far, 22 people, including a 8-year-old girl and other young people, have been killed and 64 others injured in the suicide bombing on Monday.
British police suspect that a 22-year-old man, Salman Abedi, carried out the bomb attack at Manchester Arena on Monday night after a concert by U.S. pop singer Arina Grande. The police say that the suspect lived in southern Manchester and that he was born in Britain to parents who had emigrated from Libya.
The militant group, Islamic State claimed responsibility for the bombing.

(d) ニュースの比較研究

イギリス中部のマンチェスターで起こった自爆テロのニュースについては、日本のメディアも外国のメディアも速報、詳報で報道していました。
イギリの代表的なメディアの報道を紹介しましょう。最初にBBC放送、次に発行部数の1番多いThe Sun,そして2番目のDaily Mail です。

以下の記事は、日本時間24日朝までの報道です。

『BBC(=British Broadcasting Corporation)』放送は、”Manchester attack: UK terror threat level raised to critical”(マンチェスターの襲撃:イギリスのテロ警戒レベルを「危険」に引き上げる)という見出しで、”The UK terror threat level has been raised to its highest level of “critical”, meaning further attacks may be imminent, Theresa May, said. The move came after investigators were unable to rule out whether Manchester bombing suspect Salman Abedi acted alone, the prime minister said”(メイ首相は、イギリスのテロ警戒のレベルを最高のレベルの「危険」に引き上げたと発表した。これは、さらなる襲撃が間近に迫っているという意味だ。首相は、レベルの引き上げの決定は、捜査関係者が、マンチェスターの自爆容疑者のサルマン・アベディが単独で行動を起こすかどうかを裁定できなかった後でなされたと述べた)と報じました。

『The Sun』紙は、”MASSACRE IN MACHESTER -Manchester attack leaves 22 dead as ISIS claims responsibility for Ariana Grande arena gig suicide bombing – latest live updates”(マンチェスターの大量虐殺―マンチェスターの襲撃は、22人の命を奪った。ISIS=イスラム国が、アリアナ・グランデのアリーナでのコンサートの自爆テロで犯行声明をだした。-最新情報)という見出しで、”22 people are dead and 59 injured after a suicide bomber detonated following an Ariana Grande gig at the Manchester Arena. Suicide bomber identified as UK-born Salman Abedi,22”(アリアナ・グランデのマンチェスタ ‘―・アリーナでのコンサートの後で、自爆テロの爆発で、22人が死亡し、59人がけがをした)と報じました。

『Daily Mail』紙は、”ISIS: ‘We killed your children’. Terror group claim responsibility for Manchester bombing ‘in the midst of a gathering of the Crusaders’”(ISIS=「イスラム国}声明:‘われわれは、お前たちの子どもたちを殺した’テロ・グループが、‘十字軍戦士たちの集会で’のマンチェスター自爆テロで犯行声明をだした)という見出しで、”ISIS have claimed responsibility after a suicide bomber – named today as Salman Abedi – set off the ball bearing bomb that killed 22 and injured 59 in Manchester”(サルマン・アベディという名前の自爆テロ犯が、 マンチェスターで、ボール・ベアリング爆弾を爆破させ、22人が死亡し59人がけがをした事件後、ISIS=「イスラム国」は、犯行声明を出した)と報じました。




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885. メイ英首相、6月8日に総選挙実施の意向ー2017.4.19 [国際ーヨーロッパ]

(a) 日本語のニュース

イギリスのメイ首相は、18日、イギリスのEU=欧州連合からの離脱をめぐる交渉を争点に、総選挙を6月8日に実施する意向を表明しました。
メイ首相は、ロンドンの首相官邸前で緊急の声明を発表し、2020年に予定されていた下院の総選挙を前倒しして6月8日に実施する考えを明らかにしました。
その理由について、メイ首相は、みずからが示したEU離脱交渉の方針に野党が否定的な対応をとっていると批判したうえで、EUとの2年間の交渉期間を念頭に、「もし今総選挙を実施しなければ、野党の政治ゲームが続き、交渉が最も難しい段階に次の総選挙を準備することになる」と説明しました。
メイ首相が党首をつとめる与党の保守党は、下院の定数650議席のうち、過半数をわずかに上回る330議席ですが、最新の世論調査では、保守党の支持率が44%に対し、労働党が23%となっており、メイ首相としては、高い支持率を背景に総選挙で勝利した上で、難航が予想されるEUとの交渉に臨みたい意向だとみられています。

(b)ニュースの背景

イギリスのEU離脱をめぐる動き

・2016.6.23-イギリスでEU離脱の是非を問う国民投票実施。離脱支持51.9%、残留支持48.1%で、離脱派勝利。
・2016.6.24-EU残留を主張していたキャメロン首相、辞任表明
・2016.7.13-メイ氏が首相に就任
・2017.1.17-メイ首相、演説で、移民規制を優先し、EU単一市場から完全に撤退する「強硬離脱(hard Brexit)」の意向を表明
・2017.3.29-イギリス、EUに離脱を正式に通知
・2017.4.18-メイ首相、6月8日に総選挙を実施する意向を表明

・2017.4.29-イギリスを除くEU27か国が首脳会議、交渉方針を採択
・2017.6.8-イギリスで総選挙
・2018.10-EUが離脱交渉の実質合意をめざす期限
・2019.3-イギリス、EUから正式離脱

(c) 英語のニュース

British Prime Minister Theresa May has announced a plan to call a snap general election on June 8th to seek public support for her policy on the country’s exit from the European Union.
She made the announcement in London on Tuesday. The election for the 650-seat Lower House had been initially scheduled for 2020.
Mrs. May said that she needs to strengthen her hand in Brexit talks with the European Union by bolstering support for her Brexit plan.
She said that it is necessary to try to stop the opposition jeopardizing her work on Brexit.
It is believed that Mrs. May is seeking to carry out future Brexit talks with the EU in favorable conditions with the backing of the public to be gained in the general election, as the latest opinion polls show that her Conservative Party is far ahead of the main opposition Labor Party.
At present, the Conservative Party holds 330 seats, and the Labor Party has 229 seats in the 650 seats of the Lower House.

(d) ニュースの比較研究

イギリスのメイ首相が緊急の記者会見で、イギリスのEU=欧州連合からの離脱交渉をめぐって6月8日に総選挙を実施したい意向を表明したニュースについては、世界の多くのメディアは、一斉に報道しました。
イギリスの代表的なメディアの報道を紹介しましょう。

『BBC(=British Broadcasting Corporation)』放送は、”Theresa May to seek general election on 8 June”(メイ首相、6月8日に総選挙を実施の意向)という見出しで、”UK Prime Minister Theresa May has announced plans to call a snap general election on 8 June. She said Britain needed certainty, stability and strong leadership following the EU referendum. Explaining the decision, Mrs May said “The country is coming together but Westminster is not””(イギリスのメイ首相は、6月8日に急な総選挙を実施したい意向を発表した。メイ氏は、イギリスは、EU離脱の是非を問う国民投票の後で、確実性、安定性、強いリーダーシップを必要としていると述べた。その決定を説明して、「国は一緒になっているが、議会は、そうなっていない」と述べた)と報じました。

『The Guardian』紙は、”Theresa May calls for UK general election on 8 June”
(メイ首相、6月8日にイギリスの総選挙実施の意向)という見出しで、”Theresa May has said she wants to hold a snap general election on 8 June, despite repeatedly claiming that she was against the idea of an early vote. In a surprise statement outside Downing Street on Tuesday morning, the prime minister claimed that opposition parties were jeopardizing her government’s preparations for Brexit”(メイ首相は、これまで繰り返し、早期総選挙実施に反対してきたが、6月8日に総選挙実施の意向を表明した。ダウニング街での突然の声明で、メイ首相は、野党が政府のイギリスのEU離脱準備を危険にさらしていると主張した)と報じました。

『The Financial Times』紙は、”Theresa May calls snap election in bid to strengthen hand in Brexit talks”(メイ首相、イギリスのEU離脱交渉における立場を強化するため、急な総選挙を呼び掛ける)という見出しで、”Theresa May dramatically seized the initiative on Brexit on Tuesday by calling a snap general election on June 8, as she sought a direct mandate for her plan to deliver a smooth British exit from the EU”(メイ首相は、イギリスのEU離脱で, 6月8日に急な総選挙を呼び掛けることによって、劇的に主導権を握った。イギリスのEU離脱を円滑にするための計画に直接的な委任を求めたのだ)と報じました。


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861.英首相、EUの単一市場から完全撤退表明ー2017.1.17 [国際ーヨーロッパ]


(a) 日本語のニュース

イギリスのメイ首相は、17日、ロンドンで演説し、イギリスのEU=欧州連合からの離脱に関する基本方針を示し、「EUの単一市場に留まることはできない」と述べ、域内の人やモノ、サービスの自由な移動や取引を認める単一市場からの完全撤退を表明しました。
そして、移民制限や国境管理などのイギリスの権利回復を優先する考えを示しました。
メイ首相は、イギリスは、EU離脱後にEUと包括的な自由貿易協定の締結を目指し、製造業や金融業などが単一市場に最大限アクセスできるように交渉すると強調し、EU域内の無関税の取引を続けるために新たな関税合意が必要になるとも語りました。
メイ首相は、イギリスがEUから離脱後、新たな体制が整うまでの段階的な移行措置を求める考えを示しました。
また、イギリスとEUとの原則2年間の交渉が妥結した際には、最終案をイギリスの上下両院の採決にかけて是非を問う考えも同時に示しました。
メイ首相は、「EU離脱は、よりグローバルなイギリスを築くチャンスだ」と強調しました。

(b) ニュースの背景

イギリスのEU=欧州連合からの離脱は、Brexit という言葉で表されます。これは、Britain(イギリス)とExit(出口、離脱)の合成語です。
EU離脱の是非を問うイギリスの国民投票は2016年6月行われ、離脱が51.9%、残留が48.1%で、離脱派が勝利しました。これを受けて、残留を主張してきたキャメロン首相が、辞意を表明、7月内相から保守党党首に選ばれ首相になったメイ氏が離脱交渉を率いることになりました。ヨーロッパ大陸と地続きでないイギリスは、EUに参加しながらも共通通貨ユーロを採用せず、EUと一線を画してきました。それは、世界の金融街シティを有し、英連邦の共通通貨であるポンドを使用していることも大きい。さらにEU域内の移動の自由を定めたシェンゲン協定にも参加していません。
英連邦は、かつての大英帝国の植民地の名残りというだけでなく、53か国が加盟するゆるやかな国家連合でもあり、その規模はEUを超える巨大な経済圏でもあります。
今回の国民投票で離脱派が勝利したのは、東欧などほかのEU加盟国からの移民の流入に対するイギリス国民の不満や懸念が増大していたことが要因の1つだといわれていますが、自国のことは自分たちで決めたいという意思の表れと見ることもできます。
今後の焦点は、3月末までに正式に始まるイギリスとEUの離脱交渉に移ります。離脱の条件やイギリスとEUの新しい関係を取り決める離脱交渉がどう展開していくか、両者の間だけでなく、世界経済にも大きな影響を与えることになるので世界的な注目を集めています。

(c) 英語のニュース

British Prime Minister Theresa May says that Britain will seek a complete withdrawal from the European Union, when it exits the bloc.
She made this remark in her Brexit speech in London on Tuesday to outline her government’s strategy for leaving the EU.
Ms. May promised to seek the greatest possible access to European market, but said that Britain will aim to establish its own free trade deals with countries far beyond Europe, and impose limits on immigration from the continent.
Britain plans to start the two-year exit negotiations with the EU by the end of March. The negotiations are expected to be one of the most complicated talks in post-World War Two European history.

(d)ニュースの比較研究

イギリスのメイ首相がEU=欧州連合単一市場からの完全撤退を表明したニュースについては、日本のメディアも外国のメディアも大きく伝えました。
イギリスのメディアの報道を紹介しましょう。

『BBC(=British Broadcasting Corporation)』放送は、”Brexit: UK to leave single market, says Theresa May”(イギリスのEU離脱:メイ首相、イギリスは単一市場からの撤退を表明)という見出しで、”Theresa May has said the UK “cannot possibly” remain within the European single market, as staying in it would mean “not leaving the EU at all. The PM promised to push for the “freest possible trade” with European countries and warned the EU that to try to “punish” the UK would be “an act of calamitous self-harm. She also said Parliament would vote on the final deal that is agreed”(メイ首相は、EUの 単一市場に留まることは、“EUを完全に離脱したことにはならない”ことを意味するので、EUの単一市場に留まることは、”恐らくできない“と述べた。首相は、ヨーロッパ諸国と”最も自由な貿易“を推し進めていく約束をした。そして、EUに対して、イギリスを”罰しよう“とすることは、”ひどく自虐的な行為“だと警告した)と報じました。

『REUTERS』通信は、”Britain to leave EU market as May sets ‘hard Brexit’ course”(イギリス、メイ首相が“難しい離脱のコース”を設定し、EUの市場を離脱へ)という見出しで、”Britain will quit the EU single market when it leaves the European Union, Prime Minister Theresa May said on Tuesday in a decisive speech that set a course for a clean break with the world’s largest trading bloc”(メイ首相は、世界の最大の貿易圏であるEUと明確に断絶するコースを設定する重要演説を行い、イギリスがEUを離脱する時、EUの単一市場から離脱すると述べた)と報じました。

『The Guardian』紙は、”Theresa May to confirm UK exit from EU single market”(メイ首相、イギリスはEUの単一市場から離脱することを確認)という見出しで、”Theresa May is expected to use the most important speech of her premiership to confirm that Britain will be leaving the single market while insisting that it wants to remain “the best friend” to European partners”
(メイ首相は、首相として最も重要な演説を行い、イギリスがEUの単一市場から離脱することを確認し、一方でヨーロッパのパートナーたちと”最も良い友だち“のままでいたいと主張する)と報じました。







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845. ヨーロッパ情勢まとめ(2016.12~2017.9) [国際ーヨーロッパ]

ヨーロッパ情勢まとめ(2016.12~2017.9)2016.12.10時事問題の基礎入門講座で使用したもの


欧州の反エスタブリッシュメントの勢力=反既成政治勢力は、6月のイギリスの国民投票におけるEU=欧州連合離脱決定や11月のアメリカ大統領選挙におけるトランプ氏の勝利を受けて、勢いづいています。
6月イギリスでは、EU=欧州連合からの離脱か残留かを問う国民投票が行われ、ジョンソン前ロンドン市長らの離脱派が勝ち、残留を主張していたキャメロン首相は退陣に追い込まれました。
11月アメリカの大統領選挙では、政治経歴がない、反エスタブリッシュメントを強く打ち出していた共和党のトランプ氏が国務長官や上院議員の経験のある民主党のクリントン氏を破って当選しました。トランプ氏は、選挙期間中、民主党だけでなく、共和党の首脳部も非難していました。
イギリスの場合もアメリカの場合も、ポピュリズム(大衆迎合主義)の旋風が吹き荒れ、既成政治を破壊したといえるでしょう。

12月4日、イタリアで国民投票が、オーストリアで大統領選挙が行われました。
イタリアの国民投票は、レンツィ首相が提案した議会上院の権限を縮小し、原則として下院の承認だけで法案を可決できるようにして、政府の権限強化を目指す憲法改正をめぐるもので、レンツィ首相の信任投票だともいわれていました。
開票の結果は、反対が59.11%、賛成が40.89%で、反対が賛成を大きく上回りました。レンツィ首相は、辞意を表明しました。
レンツィ首相は、憲法改正をてこに経済をはじめとするさらなる改革を進めようとしていました。しかし、労働市場の改革や金融機関の救済を優先するレンツィ首相に対して、国民の反発が強まっていました。特に新興政党の「五つ星運動」が既存の政治に対する国民の不満の受け皿になり、今後さらに影響力を強める可能性がでてきました。
オーストリアの大統領選挙では、「緑の党」の元党首のファンダーベレン氏が、右翼・自由党のホファー氏を破って当選しました。得票率は、ファンダーベレン氏が51.68%、ホファー氏が48.32%で、移民規制を掲げ、EUの統合深化に反対する右翼ポピュリストの大統領が誕生するか注目されていましたが、リベラル派が国際的な協議を訴えて振り切った形になりました。しかし、敗れたとはいえ、右翼・自由党の基盤はむしろ強まったという見方が強いといわれています。最新の世論調査では、自由党は、大連立を組む2大政党を大きく引き離してトップを走り続けているからです。

今後の主な政治日程は、3月のオランダの議会選挙、4~5月のフランスの大統領選挙、9月のドイツの議会選挙とメルケル首相の4選が可能かどうかです。
3月行われるオランダの下院選挙(定数150)で注目されているのは、反イスラムを掲げる極右・自由党で、ウィルダース党首は、ヘイトスピーチ(差別的な憎悪表現)を行ったとして公判が行われていますが、それがかえって支持拡大につながっており、最新の世論調査によりますと、自由党が、ルッテ首相率いる中道右派の自由民主党を抜いて第1党になることが確実になっているということです。
フランスの大統領選挙は、第1回目の投票が4月23日行われ、過半数を獲得した候補がいない場合は、第2回目の投票が5月7日に行われることになっていますが、これまではおおむね過半数を獲得する候補がでなかったため、上位2人で決選投票が行われています。
与党の社会党は、パルス元首相、モントブール元経済相が出馬の意向を表明していますが、いずれも苦戦を強いられており、いまのところ、最大野党共和党の中道右派フィヨン元首相と右翼・国民戦線(FN)のルペン党首が決戦に進むものとみられています。
ドイツでは、9月に連邦議会選挙が行われますが、与党キリスト民主同盟(CDU)の党首であるメルケル首相が4期目に再選されるかどうかが注目されています。
キリスト教民主同盟は、西部エッセンで開いていた党大会で12月6日メルケル首相が代議員の89.5%の支持を集め党首に再選され、連邦議会選挙で勝利を収め、4期目をめざすことになりました。
メルケル首相が率いる中道右派のキリスト教民主同盟は、現在連邦議会(630議席)で第1党であり、姉妹政党キリスト教社会同盟と合わせて310議席を占め、第2党の社会民主党(193議席)と大連立を組んでいます。
しかし、中東などからの難民を積極的に受け入れる政策を進めてきたメルケル首相に対しては難民の過剰な流入を招いたとして国民の批判が高まっていて、難民の受け入れに反対しEU=欧州連合に懐疑的な新興政党「ドイツのための選択肢」が支持をのばしているのが注目されてます。

・ニュースの用語解説

EU=欧州連合加盟国28か国とEURO加盟国19か国(国名の前に*)

*ベルギー、ブルガリア、チェコ、デンマーク、*ドイツ、*エストニア、*アイルランド、*ギリシャ、*スペイン、*フランス、クロアチア、*イタリア、*キプロス、*ラトビア、*リトアニア、*ルクセンブルク、ハンガリー、*マルタ、*オランダ、*オーストリア、ポーランド、*ポルトガル、ルーマニア、*スロヴェニア、*スロヴァキア、*フィンランド、スウェーデン、英国
以上 EU駐日代表部のHPによる


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769.メイ英新首相就任、離脱派のジョンソン氏を外相に起用ー2016.7.14 [国際ーヨーロッパ]

*2016.7.16の荻窪のテキスト(767~769)

(a) 日本語のニュース

国民投票でEU=欧州連合からの離脱を決めたイギリスで、与党保守党党首のテリーザ・メイ内相が、新しい首相に就任しました。
キャメロン首相が、13日、エリザベス女王に辞表を提出し、続いてメイ内相が女王から新しい首相に任命され、イギリスでサッチャー元首相以来26年ぶり2人目になる女性の首相が誕生しました。
メイ新首相は、59歳、1997年に下院議員に初当選したあと、保守党で初めての女性幹事長になるなど党内の要職を歴任し、2010年からはキャメロン政権で6年にわたって内相をつとめ、テロ対策や移民などに問題取り組んできました。
メイ新首相は、首相官邸前で初めての演説を行い、「国民投票の後、私たちは、大きな変化に直面しているが、私たちは、この試練に打ち勝つであろう。ともによりよいイギリスを築こう」と国民に呼びかけました。
メイ新首相は、ただちに組閣に着手し、主要閣僚を発表しました。
イギリスのEUからの離脱キャンペーンを率いて次期党首と有力視されながら党首選挙に出馬しなかった前のロンドン市長で下院議員のジョンソン氏を外相に起用するなど離脱派も重用しており、党内の融和を図るねらいがあるものとみられています。国防相など閣僚経験が豊富なハモンド外相を政権ナンバー2の財務相に任命しました。
メイ新首相は、国民投票で二分された国内の融和をはかりながら、EUからの離脱に向けて困難な交渉に臨むことになり、その手腕が問われることになります。

(b)ニュースの背景

メイ新首相のプロフィール
テリーザ・メアリー・メイ(Theresa Mary May)は、1956年イギリス南部のイーストボーン生まれで、59歳。名門オックスフォード大学のセント・ヒューズ・カレッジで地理学を学び、卒業後イギリスの中央銀行にあたるイングランド銀行に勤務。1997年下院議員に初当選、保守党で初の女性幹事長をつとめ、キャメロン政権で、2010年から2016年まで内相、2016年6月イギリスのEU離脱の是非を問う国民投票で離脱派が勝利したあと、残留派のキャメロン首相が辞任、メイ内相は、残留派でしたが、与党の保守党党首に選出、首相に就任しました。
メイ新首相は、クールで敏腕というイメージから「氷の女王」と呼ばれ、かつて同じ保守党のリーダーで「鉄の女」と呼ばれたサッチャー元首相と対比されているということです。有名ブランドのスーツや靴などを身に着けることから政界のファッションリーダーとしても知られています。

(c)英語のニュース

Britain’s new Prime Minister Theresa May is taking over the task of steering her country’s exit from the European Union.
Queen Elizabeth appointed Home Secretary May as new Prime Minister on Wednesday after Prime Minister David Cameron resigned.
59-year-old Mrs. May served as Home Secretary in the Cameron administration for 6 years, tackling terrorism and the flow of immigrants from Europe.
Mrs. May, who succeeded Mr. Cameron after seeing off several rivals for leader of the Conservative Party, became Britain’s second female prime minister after Mrs. Margaret Thatcher.
In her first speech at the Downing Street residence, Mrs. May said that as Britain leaves the European Union, Britons will forge a bold new positive role for themselves in the world.
She appointed former London mayor Boris Johnson as the new Foreign Secretary. Mr. Johnson led Britain’s “leave” campaign to a victory in a national referendum on the country’s membership in the European Union last month. Mr. Johnson replaced Mr. Philip Hammond, who became the Chancellor of the Exchequer.

(d) ニュースの比較研究

イギリスのメイ新首相が就任し、EU離脱派のリーダーだったジョンソン氏を外相に起用したニュースについては、日本のメディアも外国のメディアも大きく報道し、これからのEUとの離脱交渉の難航を予想していました。
主なメディアの報道を紹介しましょう。

イギリスの『BBC(=British Broadcasting Corporation)』放送は、”Theresa May’s cabinet: Who’s in and who’s out?(テリーザ・メイ内閣:誰が残留派で、だれが離脱派か)という見出しで、”Theresa May is forming her new government after becoming Conservative prime minister. She is continuing to announce her full cabinet – but here’s what we know so far. The list will be updated as new appointments are made. Prime Minister – Theresa May Campaigned to Remain in the European Union. The former home secretary, 59, becomes the UK’s second female prime minister in the wake of David Cameron’s resignation after the EU referendum. She had previously served in the Home Office for more than six years”(テリーザ・メイ氏は、保守党出身の首相に就任した後、新内閣を発足させている。新首相は、閣僚名簿の発表を続けている。これまでわかっている閣僚は、以下の通りで、新たな任命があれば、名簿を最新のものにする予定である。首相―テリーザ・メイ。EU=欧州連合残留派。前の内相で59歳。キャメロン首相がEUに関する国民投票の後で辞任したため、イギリスで2番目の女性の首相に就任。前に内相を6年以上つとめた)と報じ、さらに”Chancellor Philip Hammond:Remain. Foreign Secretary Boris Johnson:
Leave. Home Secretary Amber Rudd: Remain. “Brexit” Secretary David Davis: Leave. Defense Secretary Michael Fallon: Remain. . International Trade Secretary Liam Fox: Leave: Leave ・・“(フィリップ・ハモンド財務相(残留派)、ボリス・ジョンソン外相(離脱派)、アンバー・ラッド内相(残留派)、デイビッド・デイビス英離脱相(離脱派)、マイケル・ファロン国防相(残留派)、ライアン・フォックス国際貿易相(離脱派)・・)と伝えています。

イギリスの『REUTERS』通信は、”Britain’s new PM May gives Johnson big job, says needs time before Brexit talks”(イギリスの新首相、ジョンソン氏に大役を与え、イギリスのEUからの離脱交渉に入る前に時間が必要だと言明)という見出しで、”Theresa May became Britain’s prime minister on Wednesday with the task of leading it out of the European Union and quickly named leading “Brexit” supporters including former London mayor Boris Johnson to key positions in her new government”(テリーザ・メイ氏がイギリスの首相に就任した。これからの仕事は、イギリスのEUからの離脱だ。そして、ただちに、前のロンドン市長のボリス・ジョンソン氏など離脱派のリーダーたちを内閣の主要ポストに任命した)と報じました。

アメリカの『The Wall Street Journal』紙は、”U.K.’s Theresa May Readies Brexit Team With Boris Johnson in Key Cabinet Post – New British leader appoints Brexit campaigner as foreign secretary, Philip Hammond as Treasury chief”(イギリスのメイ新首相、ボリス・ジョンソン氏を内閣の主要ポストに起用し、イギリスのEU離脱チームの準備 - イギリスの新首相、離脱派の運動家を外相に任命、フィリップ・ハモンドしを財務相に任命)という見出しで、”New Prime Minister Theresa May quickly assembled a built-for-Brexit cabinet on her first evening at 10 Downing St. and, in a surprise pick, put Boris Johnson – the former London mayor who appeared politically deceased a week ago – in charge of foreign policy. Ms. May’s office announced that Mr. Johnson, the flamboyant figurehead of the campaign to leave the European Union, would succeed Philip Hammond as foreign secretary“(メイ新首相は、ダウニング街10番地の官邸で就任初日にただちにイギリスのEU離脱のための内閣を組閣した。1週間前には、政治的に死同然だったとみられた前のロンドン市長のボリス・ジョンソン氏を外相に任命した。驚きの起用だった。メイ氏のオフィスは、EU離脱運動のはでなリーダーだったジョンソン氏が、外相として、フィリップ・ハモンドしの後任になると発表した)と報じました。








































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761. 英保守党党首選挙、5人が立候補、メイ内相リードー2016.7.8 [国際ーヨーロッパ]

*2016.7.2の荻窪のテキスト*(757~761)(席上「バングラディシュの人質件」の資料配布)

(a) 日本語のニュース

イギリスの国民投票でEU=欧州連合に残留を主張して敗北し辞意を表明したキャメロン首相の後任を選ぶ与党・保守党の党首選挙に、現職の閣僚ら5人が立候補を届け出ました。
イギリスでは、6月23日国民投票が行われ、EUからの離脱支持が51.9%、残留支持が48.1%で、離脱派が勝利をおさめ、残留を訴えていたキャメロン首相は、24日辞意を表明しました。
キャメロン首相の後任を選ぶ与党・保守党の党首選挙の立候補受け付けは、30日締め切られ、党首選挙がスタートしました。立候補したのは、離脱派のマイケル・ゴーブ司法相、残留派のテリーザ・メイ内相らあわせて5人です。離脱派の運動を主導したボリス・ジョンソン下院議員は、最有力とみられていましたが、30日になって突然立候補を断念すると発表しました。
7日、329人の下院議員による2回目の投票が行われ、メイ内相が全体の60%余りに当たる199票を獲得し、これに続いて、離脱派のアンドレア・レッドサム・エネルギー担当相が84票を獲得しました。
新しい保守党の党首は、議員や党員の投票を経て、9月9日までに決まる見通しで、保守党は下院で過半数の議席を占めており、次の党首が新しい首相に選ばれることになります。そして、エリザベス女王に首相に任命されて就任し、EUに離脱を正式に通知し、EUとの難しい交渉にあたることになります。

一方、イギリスがEUからの離脱を決めた後初めてのEUの首脳会議が、6月28日と29日ベルギーの首都ブリュッセルで開かれ、最終日の29日、イギリスを除く27か国の首脳は、声明を発表し、イギリスに対し、EU域内の移民の受け入れを含む「移動の自由」を受け入れない限り、EU市場への自由な参加は認められないという厳しい姿勢で一致しました。

(b)ニュースの背景

イギリスの保守党党首選挙の日程
6月30日 保守党党首選の立候補締め切り
7月5日 下院議員の予備投票開始(週2回の投票で、最少得票者を1人ずつふるい落とし、2人に絞り込む
7~8月 決選投票の2候補が国内各地を遊説
9月9日 党員による郵便投票で決戦投票、新党首選出
9月16日 イギリス以外のEU27か国首脳会合
10月2~5日 保守党の党大会

EUのリスボン条約50条
1. いかなる加盟国も、その憲法上の要件に従い、EUからの脱退を決定することができる。
2. 脱退を決定した加盟国は、その意思を欧州理事会に通知する。EUは、その国と交渉を行い、その国の脱退に関する取り決めを定める協定を締結する。この協定は、欧州議会の同意を得た後に、理事会により特定多数決によって締結される。(特定多数決は、投票に参加する理事会構成員の少なくとも72%以上で、投票に参加する加盟国の65以上。)
3. 脱退協定が発効した日に、または、それが存在しない場合には、欧州理事会がその加盟国と合意したうえで、この期間の延長を全会一致により決定しない限り、2年後に。その国への適用を終了する。

(c)英語のニュース

In Britain, the leadership race of the ruling Conservative Party has started to elect a new prime minister, following the expressed resignation of Prime Minister David Cameron.
Following the vote in a national referendum to leave the European Union, Prime Minister Cameron, who supported the remain group, expressed his intention to resign.
Five candidates in the race include Home Secretary Theresa May of the remain group and Justice Secretary Michael Gove of the leave group. A Lower House member and a former London mayor, Mr. Boris Johnson, who led the campaign for Britain to leave the EU, suddenly announced that he will not run for the race. He had been considered a front-runner.
As of July 7th, Home Secretary May is taking a lead.
The selection process will involve votes by party lawmakers and members. A new party leader will be elected by September 9th. The winner is certain to become the new prime minister, as the Conservative Party has a majority in the Lower House seats.

Meanwhile, in Brussels, the leader of 27 EU nations, excluding Britain, have called on the country to notify the EU of its intention to withdraw as swiftly as possible to begin negotiations. They urged Britain to meet its obligations, including the free movement of people.

(d)ニュースの比較研究

イギリスの国民投票で離脱派が勝利を収めましたが、その衝撃は大きく、イギリス、EU=欧州連合への影響だけでなく、世界の経済にも影響がでてきています。日本のメディアも外国のメディアもこれらの動きに注視していますが、当面の焦点は、キャメロン首相が辞任した後の保守党党首の選挙です。
主なメディアの報道を紹介しましょう。

イギリスの『BBC(=British Broadcasting Corporation)』は、”Tory leadership: Theresa May backed by more cabinet ministers”(保守党党首選:テレサ・メイ、閣僚からの支持増)という見出しで、”Theresa May’s bid to become Conservative leader has won the backing of two more cabinet ministers and the Daily Mail. Michael Fallon and Patrick McLoughlin are backing the home secretary. Over 70 MPs now support her, including Chris Grayling, Justine Greening and David Mundell.”(テレサ・メイの保守党党首になりたいという企ては、さらに2人の閣僚と『Daily Mail』紙の支持を獲得した。マイケル・ファロン(国防相)とパトリック・マクロフリン(運輸相)が、内相を支持している。今や70人以上の国会議員が内相を支持しており、その中には、クリス・グレイリン、ジャスティン・グリーニング、デイビッド・マンデルがいる)と報じました。

ドイツの『Deutsche Welle』放送は、”Brexit: Why people are increasingly talking about the ‘Norway model’(イギリスのEU離脱:なぜ人々は、’ノルウェー・モデル‘についてますます話題にしているのだろう)という見出しで、”After voting for Brexit, the UK has to negotiate its trade relations with the EU and other countries. In this context, the so-called ‘Norwegian model’ has emerged as a favorable option, but what does it actually mean?” (イギリスがEUからの離脱を決めた投票の後で、イギリスは、EUやその他の国との貿易関係について交渉しなければならない。この文脈で、いわゆる’ノルウェー・モデル‘ は、望ましい選択肢として浮かび上がってきたが、一体実際どんな意味があるのだろうか)と報じ、”Norway is a member of the European Economic Area(EEA), but not a member of the EU. This means that much like Iceland and Liechtenstein, Norway has to comply with all EU rules, but it cannot vote on them. Its exports to the EU are also subject to customs checks, since it is not a member of the bloc’s Custom Union. (ノルウェーは、EEA=欧州経済地域のメンバーだが、EUのメンバーではない。アイスランドやリヒテンシュタインのように、ノルウェーは、EUのルールすべてに従わなければならないが、投票権はない。ノルウェーのEUへの輸出は、関税のチェックを受けなければならない。というのは、EUの関税連合のメンバーでないからだ) と伝えました。

フランスの『AFP(=L’Agence France-Presse)』通信は、”Boris Johnson pulls out of race to be Britain’s Brexit PM”(ボリス・ジョンソン、イギリスのEU離脱首相へのレースから撤退)という見出しで、”Leading Brexit campaigner Boris Johnson on Thursday ruled himself out of the race to succeed Prime Minisがter David Cameron in a bombshell announcement just a week after Britain voted to leave the EU. The decision by the former London mayor upended the leadership contest in the ruling Conservative Party and added to the deep uncertainty over how and when Britain will split from the bloc”(イギリスのEUからの離脱運動を率いてきたボリス・ジョンソンは、イギリスがEUからの離脱に投票してからちょうど1週間後に、爆弾発表を行って、キャメロン首相の後継争いから撤退した。前のロンドン市長によるこの決定は、保守党の党首選をひっくり返し、イギリスがどうやって、いつEUから離脱するかをめぐって、ますます不確実性が増した)と報じました。






















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746. イギリスで6月23日にEUからの離脱の賛否を問う国民投票ー2016.5.24 [国際ーヨーロッパ]

*2016.5.28の阿佐谷のテキスト*(746&747)

(a) 日本語のニュース

EU=欧州連合からの離脱の賛否を問うイギリスの国民投票まで23日であと1か月となり、世論調査では、離脱と残留の支持率はほぼ拮抗しており、世論を二分する激しい論戦が繰り広げられています。
残留派は、イギリスの輸出のおよそ半分を占めるEUから離脱することになれば、経済的な打撃が大きいことを強調し、テロ対策など安全保障面でも悪影響が出る恐れがあると指摘して、EUにとどまるよう訴えています。キャメロン首相をはじめ、各閣僚も強く残留を訴え、イギリス国内だけでなく、外国首脳にも同調を求めています。
これに対して、離脱派は、EUが定める移動の自由のために加盟国からの移民が急増しているほか、EUが決めるルールによってイギリスが独自の政策を実施できなくなっているなどと主張し、EUからの離脱を呼びかけています。
世論を二分する激しい論戦が繰り広げられている中、最近行われた世論調査では、残留を支持する人は44%、離脱を支持する人は40%となっていて、拮抗しています。
今回の国民投票で、イギリスがEUから離脱することになれば、統合を進めてきたEUの将来に大きな影響を与えるだけでなく、世界的にも金融市場などに混乱をもたらす恐れもあり、イギリスの動向に世界的な注目が集まっています。

(b) ニュースの背景

イギリスとEUの関係をみてみますと、1993年発足したEU=欧州連合は、第2時世界大戦後に、フランスと西ドイツ主導でつくられたECSC=欧州石炭鉄鋼共同体などが母体となっています。イギリスは、1973年に遅れて後身のEC=欧州共同体に加盟しました。しかし、イギリスは、EUの共通通貨であるEURO=ユーロを導入していませんし、加盟国間の自由な人の往来を認める「シェンゲン協定」にも参加していません。
近年、東欧のEU新規加盟国などからイギリスへの移民が流入、EU離脱論が高まりました。
今回のイギリスの国民投票の背景には、ポーランドなど東欧のEU加盟国からイギリスの手厚い福祉手当を目的に入国する労働者が多いという不満がイギリス国内にあることが指摘されています。キャメロン氏率いる保守党は、昨年5月の総選挙で、国民投票を公約に掲げて大勝し、今年2月キャメロン首相は、EU首脳会議で、イギリスのEU改革案を説明し、首脳会議は、イギリスへの域内移民の抑制策など特例を設けることに全会一致で合意しました。それは、イギリスは、移民抑制策として、流入が多い場合には、社会保障給付を最大4年間制限できる緊急手続きの導入を認め、手続きの継続期間は、キャメロン首相が最低水準とした7年で合意しました。イギリスの要求に、東欧加盟国を中心に反発が強く、協議は難航していましたが、結局イギリスの案をのみました。
キャメロン首相は、ただちに帰国し、緊急閣議を開き、EU首脳会議の結果を報告、その後、6月23日にEU離脱の是非を問う国民投票を実施すると発表しました。

(c) 英語のニュース

Britain will hold a referendum on June 23rd to decide whether the country should leave or remain in the European Union.
Public opinion is split over the issue. The latest opinion polls show that 44 percent of respondents support the “Remain” side while 40 percent back “Leave” side.
The “Remain” side insists that the nation would suffer a major economic blow as about half of Britain’s exports go to the EU. It also says that the withdrawal could also hurt counter-terrorism and other security arrangements.
The “Leave” side claims that the number of migrants to Britain from the EU member states is surging and that EU rules are blocking Britain from implementing some measures independently.
The referendum is drawing international attention as a vote for an exit might trigger turmoil on global financial markets and have some influence on the future of the EU.

(d) ニュースの比較研究

6月23日にイギリスで行われる国民投票で、イギリスがEU=欧州連合に残留するか、離脱するかが決まりますが、離脱することが決まった場合には、EU内部だけでなく世界的に大きな影響がでることになりますので、世界的な関心を呼んでいます。
イギリスのメディアの報道を紹介しましょう。

『Financial Times』紙は、”Brexit shock would cause loss of half a million jobs, Javid warns”(ジャビッド・ビジネス相警告:イギリスがEUを離脱した場合には、50万人の失業者がでるだろう。 Brexitは、Britain(イギリス)+exit(出口、離脱)の合成語)という見出しで、”Britain faces the loss of more than half a million jobs if it votes to leave the EU, according to a bleak analysis of the short-term economic shock of a Brexit vote to be published on Monday by the Treasury”(イギリスの財務省が発表する予定の短期的な経済的衝撃の暗い分析によれば、イギリスは、もし国民投票でEUを離脱することになれば、50万人以上が失職する事態に直面する)と報じました。

『REUTERS』通信は、”UK would lose at least 500,000 jobs after Brexit vote: Osborne”(オズボーン財務相談:国民投票でイギリスがEUから離脱を決めたら、少なくとも50万人が失職するだろう)という見出しで、”Britain would lose at least half a million jobs within two years of a vote to leave the European Union and a fall in the value of the pound would push up inflation sharply, fiancé minister George Osbourne said on Monday”(オズボーン財務相は、イギリスが国民投票でEU離脱を決めたなら、2年以内に50万人が失業し、ポンドの価値は下落し、インフレはさらに悪化することになるだろうと述べた)と報じました。

『BBC(=British Broadcasting Corporation)』放送は、”EU referendum: Brexit ‘would spark year-long recession’ – Treasury”(EUに関する国民投票:イギリスの離脱は、1年間の景気後退を引き起こすー財務省報告)という見出しで、”Leaving the European Union would tip the UK into a year-long recession, with up to 820,000 jobs lost within two years, Chancellor George Osborne says. Publishing Treasury analysis, he said a Leave vote would cause an “immediate and profound” economic shock, with growth between 3%and 6% lower”(オズボーン財務相は、イギリスがEUから離脱すれば、イギリスは、1年間の景気後退に陥り、2年間で82万人が失業するだろうと述べた。財務省の分析を発表してさらに、離脱すれば、“即刻の、そして深い”経済的ショックを引き起こし、経済成長は、3%から6%の間で下がるだろうと述べた)と報じました。













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725.ベルギーで連続テロ事件(最新版)ー2016.3.24 [国際ーヨーロッパ]

(a)日本語のニュース

ベルギーの首都ブリュセルの国際空港と地下鉄駅で、22日連続テロ事件が起き、これまでに合わせて少なくとも30人が死亡し、およそ270人がけがをしました。一方、過激派組織「IS=イスラム国」が、事件後、犯行を認める声明を出しました。
ベルギーの捜査当局は、空港の監視カメラに写っていた3人の男が事件にかかわったとみて、写真を公開しました。このうち2人は自爆テロで死亡し、もう1人は逃亡しています。また地下鉄では、1人の男が自爆テロで死亡しています。
空港では、2度の爆発があり、そのおよそ1時間後にEU=欧州連合本部近くの地下鉄駅構内でも爆発があったということで、これまでに合わせて少なくとも30人が死亡し、およそ270人がけがをしました。けが人のうち、日本人は2人で、30代の男性が地下鉄で重症を負い、もう1人は軽いけがをしたということです。
一方、過激派組織「IS=イスラム国」系の通信社は、事件はIS戦闘員が実行したと報じ、ブリュッセルが標的となったのは、「ISと戦う有志連合に参加している国の首都」だからだと述べています。
ベルギーでは、この事件の4日前、昨年11月パリで起きた同時多発テロ事件の実行犯とされる容疑者が、4か月の逃亡の末に逮捕されていますが、ベルギーの捜査当局は、今回のテロ事件との関連を調べています。

(b)ニュースの背景 

・過激派組織「IS=イスラム国」が犯行声明を出した主なテロ事件

2015年1月 日本人人質の後藤健二さん、湯川遥菜さんの殺害を警告し、後に殺害映像を公開
2015年3月 チュニジアの首都チュニスの博物館での銃撃で日本人観光客らが死亡
2015年10月 エジプトのシナイ半島でロシア旅客機が爆弾テロのため墜落
2015年11月 パリ同時多発テロ、犯行声明で「シリアへの攻撃をやめない限り、フランス国民に安全はない」
2016年3月 ベルギーの首都ブリュッセルの空港、地下鉄で連続テロ、犯行声明「十字軍連合に暗黒の日々を約束」

・ヨーロッパにおける主なテロ事件

2004年3月 スペインのマドリードで列車爆破、約190人死亡
2005年7月 イギリスのロンドンでバス、地下鉄爆破、 50人以上死亡
2014年5月 ベルギーのブリュッセルでユダヤ博物館で男が発砲、4人死亡
2015年1月 フランスのパリで新聞社などで連続テロ、17人死亡
2015年11月 フランスのパリでコンサートホールなどで同時多発テロ、130人死亡
2016年3月 ベルギーのブリュッセルで空港、地下鉄で連続テロ、少なくとも30人死亡

(c)英語のニュース

At least 30 people have been killed and about 270 others injured as explosions hit the international airport and a subway station in the Belgian capital Brussels. The Islamic State militant group has claimed responsibility for the attacks.
Two bombs exploded in the departure terminal of Brussels’ international airport Tuesday morning, and about an hour later, another blast struck a subway train that was leaving the Maelbeek metro station near the European Union headquarters.
Officials say that at least 30 people have been killed and about 270 others, including 2 Japanese men, injured in total.
Belgian police have released a photo of 3 men believed to have been involved in the bombings at the airport.. They say that 2 of them died in suicide bombings, but the third is on the run.
The fourth man died in suicide bombing in the subway attack.
The bombings came 4 days after a key suspect in last November’s terrorist attacks in Paris was arrested in Brussels.

(d)ニュースの比較研究

ベルギーの連続テロ事件のニュースについては、日本のメディアも外国のメディアもトップニュースで速報、詳報で報道していました。映像とか写真については、social media のものを多用していました。すさまじいシーンがかなりありました。
主なメディアの報道を紹介しましょう。

フランスの『AFP(=Agence France-Presse)』通信は、"Brussels, Europe's jihadist breeding ground, now itself under attack"(ブリュッセルは、ヨーロッパの聖戦の戦士を育成する場だったが、今や攻撃の下にさらされている)という見出しで、"Brussels has become infamous as a hotbed of Islamic extremism because of links to a series of recent attacks in Europe, and now the Belgian capital itself has suffered the worst ever attacks in its history."(ブリュッセルは、イスラム過激派の温床として不名誉になった。なぜなら、ヨーロッパにおける一連の攻撃との関連からだ。そして、今やベルギーの首都ブリュッセルは、史上かつてないほど最悪の攻撃を受けたのだ)と報じました。

イギリスの『BBC(=British Broadcasting Corporation)』放送は、"Brussels attacks: Scores remain critical after bombings"(ブリュッセルの襲撃事件:自爆テロの後、何十人もの人が依然として危険な状態)という見出しで、"Scores of people remain in intensive care following suicide Tuesday's bomb attacks in Brussels that left 31 people dead, Belgium's health minister says"(ベルギー保健相は、31人が死亡したブリュッセルの自爆テロ事件後も、何十人もの人たちが、依然として集中治療を受けていると述べた)と報じました。

アメリカの『The Wall Street Journal』紙は、"ISIS Claims Responsibility for Brussels Attacks; More Than 30 Dead"(ISIS=イスラム国、ブリュッセルの襲撃事件で犯行声明、30人以上死亡)という見出しで、"Terrorists struck a European capital for the second time in four months, killing dozens here(Brussels) Tuesday in bombing plotted under the noses of authorities just days after a prime suspect in last year's carnage in Paris was captured"(テロリストたちは、ヨーロッパの首都を4か月のうちに2回も襲撃し、ブリュッセルで何十人もの人たちを殺害した。それも、昨年のパリでの大量殺戮事件の主な容疑者が逮捕されてから何日もたっていないのに、当局にたいして公然と襲撃事件を起こしたのだ)と報じました。














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651.ギリシャ議会、財政改革関連法案を可決ー2015.7.16 [国際ーヨーロッパ]

*2015.7.11のサロンのテキスト*(649~651)

(a)日本語のニュース

財政危機にあるギリシャ議会は、16日、ユーロ圏各国が金融支援の協議を始める条件としている財政改革の関連法案を賛成多数で可決しました。これによって、ギリシャは、新たな金融支援に向けて一歩前進しました。
ギリシャ議会は、300議席の一院制で、賛成票が229票、反対が64票、白票が6票、1人が欠席しました。チプラス首相の率いる急進左派連合=シリザの議員149人のうち39人が造反しました。一方、76議席を持つ最大野党の新民主主義党などEU=欧州連合寄りの3野党の全議員が賛成に回りました。
ギリシャ議会が可決したのは、財政改革のための様々な法案をまとめた一括法で、レストランでの付加価値税(VAN)を13%から23%に引き上げるほか、離島の軽減税率を原則廃止して税収を増やす、年金の給付年齢引き上げなどで歳出を抑えるなどとなっています。
EU=欧州連合は、13日のユーロ圏首脳会議で、ギリシャが財政改革を法制化すれば、3年で820億ユーロ、日本円でおよそ11兆円の金融支援に向けた手続きに着手することで合意しています。
今後は、ドイツやフィンランドなどEU各国がギリシャ支援のための議会承認の手続きに入ることになります。

(b)ニュースの背景

ユーロ圏19か国緊急首脳会議が、13日、17時間に及ぶ協議の結果合意したギリシャ支援の骨子は以下の通りです。
ギリシャは、15日までに議会が増税や年金改革などの財政再建策を法制化する、500億ユーロ規模の国有財産を民営化基金に売却する、それを債務返済や銀行への資本注入に活用する
一方、ユーロ圏は、ギリシャ議会が法制化後に支援手続きを開始する、支援は、ESM=欧州安定メカニズムを活用する、ドイツなど一部の国では議会の議決が必要になる、支援の総額は、820億ユーロ~860億ユーロの見込み、7月20日までに70億ユーロ、8月半ばまでに50億ユーロの短期資金が必要で、短期的なつなぎ融資も実施する、経済成長に向け、雇用創出や投資促進を支援する、債務の削減はしないが、返済期間の延長などは検討する。

(c)英語のニュース

The Greek parliament has passed a package of austerity measures demanded by European creditors as a condition for a fresh bailout.
The package passed with 229 votes in favor in the 300-seat chamber but 39 lawmakers of the ruling Syriza party abstained or voted against the government of Prime Minister Alexis Tsipras.
The austerity mesures include tax overhauls, such as increases to value-added tax, and pension reforms, such as limits on early retirement.
The move is expected to prompt eurozone countries to start the process toward renewed financial assistance to Greece and avert Greece's bankrupcy and exit from the 19-member currency union.

(d)ニュースの比較研究

財政危機のギリシャとドイツを中心にした債権者のユーロ圏の駆け引きのニュースについては、日本のメディアも欧米のメディアも連日フォローして伝えていました。
代表的なメディアの報道を紹介しましょう。

ドイツの『Deutche Welle』放送は、"Greece: Tsipras wins austerity vote, but watches Syriza split"(ギリシャ情勢:シプラス首相、緊縮政策の投票では勝利、しかし彼の政党シリザの分裂を見る)という見出しで、"The vote for fresh austerity measures has revealed deep rifts in Greece 's ruling party. The Syriza government had come to power in January on pledges of putting a stop to five years of austerity imposed from abroad"(新たな緊縮策への投票は、ギリシャの与党の深い亀裂を明らかにした。シリザ政権は、5年間にわたって外国から課せられた緊縮策に停止をかけるという約束をして1月に政権の座についたのだ)と報じました。

イギリスの『BBC(=British Broadcasting Corporation)』放送は、"Greece debt crisis: PM Tsipras 'focused on bailout deal'(ギリシャ債務危機:シプラス首相、’緊急援助の取決めに焦点’)という見出しで、"Greek PM Alexis Tsipras is focused on completing a bailout deal agreed with the eurozone despite setbacks in a crucial vote to push through tough reforms, his spokesman has said"
(ギリシャのシプラス首相のスポークスマンは、首相は、ユーロ圏の国々と合意した緊急援助の取決めを完成させることに焦点をおいていると述べた。しかしながら、首相は、きびしい改革を推し進めるための重要な投票で後退してしまったのだ)と報じました。

アメリカの『The Wall Street Journal』紙は、"Greece's Parliament Passes Austerity Measures Required for Bailout"(ギリシャ議会、緊急援助のために必要とされる緊縮策を承認)という見出しで、"Greece's Parliament passed austerity measures needed to secure a fresh bailout, but a rebellion within the ruling Syriza party is testing whether Prime Minister Alexis Tsipras can hold his government together as he seeks to complete the deal"(ギリシャ議会は、新たな緊急援助を確保するのに必要とされる緊縮策を承認した。しかしながら、与党のシリザ党の内部の反乱は、シプラス首相が、その取決めを完成させたいと思っているので、彼の政権をともに維持することができるかどうかをテストしているのだ)と報じました。


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