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655.トルコ軍、シリアとイラクの武装組織の拠点を空爆ー2015.7.30 [国際ー中東、欧米]

*2015.8.1のサロンのテキスト*

(a)日本語のニュース

トルコ軍が、隣国シリアの過激派組織「IS=イスラム国」の拠点と同じく隣国イラクの北部のクルド人武装組織「PKK=クルディスタン労働党」にも空爆を続けていて、情勢は混迷を深めています。
トルコ軍は、7月20日トルコ南部で「IS=イスラム国」とつながりがあるとみられる男が自爆テロを起こし、32人が死亡したことなどへの報復として、初めて7月24日からシリア国内にあるISの拠点に対して空爆を始めました。また、トルコは、24日アメリカ主導の有志連合によるトルコの基地の使用も認めました。
このテロ事件をきっかけに、トルコ政府と停戦を宣言しているクルド人武装組織「PKK=クルディスタン労働党」の対立も再燃し、トルコ軍は、7月25日と26日2日連続で、PKKのイラク北部の拠点に空爆を行いました。25日夜トルコ南東部のディヤルバクルで、トルコ軍の車列を狙った自動車爆弾が爆発し、兵士2人が死亡し、4人がけがをしましたが、軍はPKKの犯行とみており、双方の報復の連鎖が激しくなることが懸念されています。
こうした中で、トルコは、NATO=北大西洋条約機構に対して、加盟28か国による緊急の会合を開くよう要請しました。
NATOは、これを受けて、28日ベルギーの首都ブリュッセルで、緊急の大使級理事会を開き、トルコの説明を聞き、協議を行いました。会合後の声明では、「いかなる形態のテロも許されず、正当化されない」とテロ行為を改めて非難し、トルコへの連帯を表明しましたが、具体的な軍事協力には踏み込みませんでした。

(b)ニュースの背景

最近のトルコの動き

大統領選挙
2014年7月エルドアン首相、初の直接選挙による大統領選挙に立候補を表明
2014年8月大統領選挙で、エルドアン、首相から鞍替えし、過半数票を獲得して当選、大統領に就任、エルドアン、AKP=公正発展党(イスラムの伝統を尊重、民主主義を掲げる政党で、議会で第1党)を大統領就任に伴い離党、ダクトオール外相、党首に、また首相に任命

総選挙
2015年6月総選挙(一院制、550議席)、選挙管理委員会の発表によりますと、AKP=公正発展党40.87%、世俗派のCHP=共和人民党24.95%、右派のMHP=民族主義者行動党16.29%、クルド系のHDP=人民民主主義党13.12%。
AKP=公正発展党、53議席減の258議席で第1党、2002年の政権発足以来、初の過半数割れ、一方、クルド系政党のHDP=人民民主主義党、51議席増の80議席に躍進、

クルド問題
クルド人は、クルド語を母語として独自の文化を持ち、現在は、トルコ、シリア、イラク、イランに分断されて住んでおり、人口は、3000万人くらいと推定されています。そのうち、トルコでは、クルド人は、およそ1000万人いると推定され、1984年PKK=クルディスタン労働者党が分離独立を求めて武装闘争を始めました。PKKは、トルコでは、非合法組織で、クルド人の独立国家樹立を目指す武装組織です。トルコとの国境に近いイラク北部に拠点を置き、トルコ国内で活動、アメリカとEU=欧州連合は、テロ組織と指定しています。創設者は、アブドラ・オジャランで、1999年逃亡中にケニアで拘束され、同年国家反逆罪で、死刑判決を受けましたが、2002年終身刑に減刑され、服役中です。オジャランは、2013年トルコ政府との停戦とトルコ領からの戦闘員の撤退を呼びかける声明を発表、それ以降トルコ政府と断続的に和平交渉を行ってきたといわれています。

(c)英語のニュース

Turkish warplanes have bombed the Islamic State militant group's position in Syria for the first time, and also Kurdish PKK militants in northern Iraq.
Turkish Prime Minister Ahmet Davutoglu says that these attacks were made to
defend the country's security. He adds that 590 suspected IS and PKK members have been arrested.
The Turkish air strikes came after a man linked to the IS militant group carried out a suicide bombing in a Turkish town near the border with Syria, killing 32 people. .Subsequent clashes with IS fighters on the Turkey-Syria border led to the death of a Turkish soldier.

Meanwhile, NATO, or the North Atlantic Treaty Organization, has condemned terrorism, but didn't commit to any specific action to help Turkey.
Ambassadors from NATO's member nations met in Brussels for an emergency session and were briefed on the Turkish military operations.

(d)ニュースの比較研究

トルコ軍がシリアとイラクの武装組織の拠点に空爆を加えたというニュースについては、日本のメディアも外国のメディアも報道しましたが、欧米のメディアの扱いが大きかったと思います。
代表的なメディアの報道を紹介しましょう。

中東・カタールの『Al Jazeera』放送は、"Turkey expands bombing raids to PKK targets in Iraq"(トルコ、イラクにあるクルド人武装組織PKKの拠点に対する空爆を拡大)という見出しで、"Turkish fighter jets have bombed military positions of Turkey's Kurdistan Workers Party(PKK) in neighbouring
Iraq. The air raids came hours after Turkish planes pounded Islamic State of Iraq and the Levant(ISIL) positions in Syria on Friday morning, marking a significant shift in Ankara's position on how to deal with armed groups in Syria and Iraq.(トルコのジェット戦闘機は、隣国イラクにあるトルコのPKK=クルディスタン労働者党の軍事的拠点を空爆した。その空爆は、トルコ軍機が、シリアにあるISIL=イスラム国の拠点を爆撃した後行われた。それは、トルコがシリアとイラクの武装勢力をどう扱うかという立場の重要な転換だ)と報じました。

アメリカの『The New York Times』紙は、"Turkey Escalates Airstrikes on Kurdish Targets in Northern Iraq"(トルコ、イラク北部のクルド人の拠点への空爆拡大)という見出しで、"Turkey stepped up its offensive against Kurdish militias in northern Iraq early Wednesday, pounding targets in six locations from the air, officials said. The Iraqi government condemned the airstrikes, calling them "a dangerous escalation and an assault on Iraqi sovereignty."(トルコ政府関係者によれば、トルコは、イラク北部のクルド人武装勢力に対する攻勢を強め、6か所の拠点を空爆した。イラク政府は、その空爆を”危険な拡大とイラクの主権に対する侵害”であると非難した)と報じました。

アメリカの『AP(=Associated Press)』通信は、"Kurds fight IS group while dreaming of independence and enduring Turkish attacks"(クルド人、独立を夢見、トルコの攻撃に耐えながら、IS=イスラム国と闘う)という見出しで、"U.S. and Turkish plans to create an "Islamic State-free zone" in Syria along the Turkish border could escalate the conflict between Turkey and Kurdish fighters in Syria and Iraq. With the help of U.S. airstrikes, the Kurds have proven to be among the most effective ground forces against the IS group. But their advance across northeastern Syria in recent months has alarmed Ankara, which fears they could revive a decades-long insurgency in pursuit of statehood"(トルコの国境に沿ってシリアに”イスラム国無人地帯”を作ろうというアメリカとトルコの計画は、トルコとシリアやイラクのクルド人戦闘員の間の争いを拡大することになるだろう。アメリカの空爆に助けられて、クルド人戦闘員は、IS=イスラム国に対抗する最も効果的な地上軍の1つであることを証明した。しかしながら、最近のシリア北東部における彼らの進撃は、トルコ政府に警鐘を鳴らした。それは、彼らが、独立をめざして何十年も続けてきた反政府活動を復活できることを恐れているからだ)と報じました。

イギリスの『BBC(=British Broadcasting Corporation)』放送は、"Tourkey president Erdogan in China amid Uighur tensions"(トルコのエルドアン大統領、ウイグルの緊張の中で訪中)という見出しで、"Turkey's President Recep Tayyip Erdogan is in Beijing for a state visit to meet Chinese counterpart Xi Jinping. Mr. Erdogan is leading a delegation of businessmen in talks expected to focus on economic ties. But discussions may also cover Turkey's controversial plans to buy a Chinese long-range missile system. His visit comes after recent diplomatic tensions over China's treatment of its Muslim Uighur people who have close cultural and religious ties with Turks"(トルコのエルドアン大統領は、中国の習近平国家主席と会うために国賓として中国を訪問中で北京に滞在している。エルドアン大統領は、財界の代表団を率いていて、会談は経済関係が中心とみられる。しかしながら、会談は、また、中国の長距離ミサイル・システムを購入するというトルコの問題のある計画も含まれるだろう。彼の中国訪問は、トルコと文化的、宗教的に密接的な関係にあるイスラム教徒のウイグルの人たちに対する中国の取り扱いをめぐる最近の外交的緊張の後に行われたものだ)と報じました。
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569.OPECの減産見送りで、原油安加速ー2014.11.29 [国際ー中東、欧米]

(a)日本語のニュース

中東など産油国の12か国でつくっているOPEC=石油輸出国機構が減産を見送ったことから、原油安が加速しています。
OPECは、27日の総会で、12か国の生産目標をいまの1日当たり3000万バレルで据え置くことを決めました。
この総会は、アメリカのシェールオイルの生産が増えていることに加え、ヨーロッパや中国などの新興国の景気減速による需要の伸び悩みで、原油価格が大きく値下がりする中で、対応策を話し合うため開かれました。
原油輸出に財政を依存しているベネズエラなど加盟国の一部は、値下がりに歯止めをかけるため、減産に踏み切るべきだと主張しましたが、現状の生産量を維持したいサウジアラビアなどが反対し、対立は埋まりませんでした。
総会の後、OPECのバドリ事務局長は、記者会見で、「原油安の進行というこの数か月間の状況は、急いで物事を決めることを意味しない」と述べ、当面は原油価格の動向を静観する構えを強調しました。

OPECが減産を見送ったことを受けて、28日の国際石油市場は、原油価格が急落し、4年半ぶりの安値をつけました。アジアの指標となる中東産ドバイ原油のスポット価格は、68.40ドル前後で推移、ニューヨークの原油先物は、68ドル台をつけ、ともに4年半ぶりの安値を更新しました。
今後も、市場では、原油安が一段と加速するものとみられています。

(b)ニュースの背景

OPECは、The Organization of the Petroleum Exporting Countries の略語で、石油輸出国機構のことです。1960年バグダッドで開かれたイラク、イラン、サウジアラビア、クウェート、ベネズエラ の5大石油輸出国会議で創立が決まりました。世界の原油生産量に占めるシェアは、およそ40%です。
目的は、原油価格の安定維持のため産油国の共通の石油政策を立案、実施し、原油価格の安定を保証する方式として生産制限を検討、消費国への有効かつ安定した原油供給、石油会社との公平な利益配分を研究することです。
加盟国は、イラク、イラン、クウェート、サウジアラビア、アルジェリア、ベネスエラ、カタール、リビア、アラブ首長国連邦、ナイジェリア、アンゴラ、エクアドルの12か国です。

シェールガス(shale gas)というのは、地中深くシェール層(頁岩(けつがん)層)という岩盤層に含まれる天然ガスのことです。採掘技術の確立によって、アメリカで2010年頃から生産が本格化し、その後飛躍的に増加を続けています。供給量が多く低価格なのが、シェールガスの特徴で、ガスと同時にでてくる液体部分を高い石油の価格で売れるところから、石油価格が高いほどガスが安くなる仕組みです。ガス、石油の供給に大きなインパクを与えるとともに、雇用増と製造業の国際協力復活によってアメリカ経済を押し上げているところから、シェールガス革命といっています。天然ガスの生産量が飛躍的に増加するとともに、天然ガスの可採年数も飛躍的に伸びるものと予想されています。

(c)英語のニュース

Crude oil prices have fallen sharply, as the Organization of Petroleum Exporting Countries has decided not to cut its output target.
Crude oil futures fell to the lowest level in 4-and-a-half years in London and New York in reaction to the decision made by the 12 member nations of the OPEC in Vienna to keep their collective daily oil output target at 30 million barrels.
This came after Venezuela and other countries appealed for a reduction to curb a further drop in crude oil prices, but Saudi Arabia and other countries argued that OPEC does not need to slash its oil production target as current price fluctuations are only short-term ones.

(d)ニュースの比較研究

OPEC=石油輸出機構の減産見送りで原油安が加速していくニュースについては、日本のメディアも外国のメディアも報道しました。いずれも原油安はアメリカのシェールオイルの生産拡大が影響していることを指摘しています。
代表的なメディアの報道を紹介しましょう。

中東・カタールの『Al Jazeera』放送は、"Oil prices plummet to low after OPEC decision - OPEC resists pressure from its poorer members, notably Venezuela, to cut output and triggers five-year low in prices "(OPEC決定後、原油価格下落-OPEC、ベネズエラなど貧困国からの圧力に抵抗、原油価格5年ぶりの安値を誘発)という見出しで、"OPEC has decided against cutting the amount of oil it produces despite a glut in global supplies, triggering a five-dollar collapse in crude prices. The cartel pumping out one-third of the world's oil opted to stick by its output target even after prices have plunged by 35 percent in value since June"(OPECは、世界的な供給過剰にもかかわらず、生産する石油の量を削減しないことを決めたことによって、原油価格の5ドルの暴落をもたらした。世界の石油の3分の1を生産しているこのカルテル(OPEC)は、原油価格が6月以来35%下落した後でさえ、生産目標を固定することを決めた)と報じました。

イギリスの『BBC(=British Broadcasting Corporation)』放送は、"Oil prices plunge after Opec meeting"(OPECの会議後、原油価格急落)という見出しで、"The price of oil slumped after the Opec oil producers' cartel decided not to cut output at its meeting in Vienna. Opec secretary general
Abdallah Salem el-Badri said they would not try to shore up prices by reducing production"(原油価格は、OPECの石油生産者のカルテルは、ウィーンの会議で、生産高を削減しないことを決めた。OPECのバ ドリ事務局長は、OPECは、生産削減によって価格を支えようとはしないと述べた)と報じました。

オーストラリアの『ABC(=Australian Broadcasting Corporation)』放送は、"Oil price collapses after OPEC nations decide against cutting production"(OPECが生産削減をしないことを決定した後、原油価格は暴落)という見出しで、"The price of oil collapsed overnight after OPEC nations decided against cutting production to prop up dwindling values. And expectations are that crude prices might go even lower after the usually powerful Gulf producers decided to do nothing"(OPECが、価格下落を支えるために減産することはしないことを決めた後に、一夜にして原油価格は暴落した。そして、通常では力のある湾岸産油国が何もしないことを決めた後、原油価格は、さらに下落するものと予測されている)と報じました。









   

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