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736. 175か国、地球温暖化対策のパリ協定に調印ー2016.4.24 [国際ー国連]


(a) 日本語のニュース

新たな地球温暖化対策の国際協定であるパリ協定の署名式が、22日、ニューヨークの国連本部で行われ、175の国と地域が署名しました。
パリ協定は、昨年フランスで開かれた地球温暖化対策をめぐる国連の会議COP21で採択された、1997年の京都議定書に代わる18年ぶりの国際的な枠組みで、すべての国が協力して世界全体の温室効果ガスの排出量をできるだけ早く減少に転じさせ、今世紀後半には実質的にゼロにすることを目指しています。
パリ協定の署名式には、国連のバン・ギムン事務総長、フランスのオランド大統領、アメリカのケリー国務長官ら各国の首脳や閣僚らが出席しました。
パリ協定が発効するためには、少なくとも55か国が批准し、それらの国で、世界全体の温室効果ガスの排出量の55%以上を占めることが必要で、国連のバン・ギブン事務総長も、演説の中で、各国に早期の批准を呼びかけています。

(b) ニュースの背景

地球温暖化(global warming)とは、二酸化炭素などの温室効果ガスの増加により、地球の気温が高まり、自然や生活環境に各種の悪影響が生じる現象のことです。これに対応するためには、各種の温室効果ガスの排出削減(省エネルギーやフロンの削減など)、温室効果ガスを吸収する森林の保護や植林などが必要です。

温室効果ガス(GHG=greenhouse gas)というのは、太陽の放射熱と同量の熱が地表から赤外線として宇宙に放射されることで大気の温度はバランスを保っていますが、この赤外線を一部吸収するガスのことです。二酸化炭素(CO2)、メタン(CH4)、オゾン(O3)などがあり、これらの濃度が高まると気温が上がることになります。特に二酸化炭素は、石油などを燃やすと発生し、現在の巨大化・高度化した経済活動と密接な関係があります。

京都議定書(Kyoto Protocol to the United Nations Framework Convention on Climate Change)というのは、1997年に京都で行われた第3回国連気候変動枠組み条約の締約国会議のことで、COP3(Conference of the Parties)ともいいます。2005年発効し、現在191か国およびEU=欧州連合が締結しています。二酸化炭素、メタンなど6種の温室効果ガスを対象とし、2008年~2012年の間に先進国の締約国全体で1990年に比べて5%以上削減することを目標に、各国ごとの法的拘束力のある数値目標を定めました。(日本6%、アメリカ7%、EU=欧州連合8%など)。しかし、2001年アメリカが離脱し、日本とロシアも、京都議定書の第2約束期間(2013年~2020年)には、参加せず、中国やインドなど新興国や途上国は、削減義務がないことから、もともとの京都議定書は、骨抜きの状態になっていました。

国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC=Intergovernmental Panel on Climate Change)というのは、国連環境計画と世界気象機関が共催し、各国政府が参加している会合で、地球温暖化などについて報告書をだしており、それは、 最も信頼できる科学的情報とされています。
IPCCは、2014年11月地球温暖化をめぐる最新の研究成果をまとめた報告書を公表し、今のペースで温室効果ガスの排出が続けば、今世紀末には人々の健康や生態系に「深刻な広範囲にわたる後戻りできない影響が出る恐れ」が高まり、 被害を軽減する適応策にも限界が生じると予測し、各国政府に迅速な対応を迫っています。

パリ協定
2015年パリ郊外で地球温暖化対策を討議していた国連の会議は、2015年12月、開発途上国を含むすべての国が協調して2020年からの実施を目指す地球温暖化対策の新しい枠組みパリ協定を採択しました。
パリ協定は、地球温暖化対策の国際的枠組みとしては、先進国だけに温室効果ガスの排出削減を義務づけた1997年の京都議定書以来18年ぶりのことで、史上初めて開発途上国を含むすべての国が協調して削減に取り組む枠組みとなり、地球温暖化阻止へ向けて歴史的な一歩を踏み出したことになります。
パリ協定は、法的拘束力のある2020年以降の国際的な枠組みで、気温上昇を18世紀後半から19世紀前半に行われた産業革命の前に比べて、1.5度に抑えるよう努力するとし、世界全体の温室効果ガスの排出量を21世紀後半には実質的にゼロにするよう削減に取り組むとしています。
また、開発途上国も含めたすべての国が5年ごとに温室効果ガスの削減目標を国連に提出し対策を進めることが義務付けられ、削減目標は提出するたびに改善されるべきだとしています。

温室効果ガス排出量
京都議定書が採択された1990年代と現在で最も大きく変わったのは、温室効果ガスを大量排出する国の顔ぶれです。かつては、先進国が中心でしたが、現在では、排出量1位は中国、アメリカが2位、インドが3位で、途上国で世界全体のおよそ6割を占めるようになりました。今後も途上国の排出量は、人口増加で右肩上がりが予想されています。
各国の温室効果ガス排出量は、CO2換算で、世界全体で、317億トン、中国が26%、アメリカが16%、EU=欧州連合(28か国で構成)が11%、インドが6.2%、ロシアが5.2%、日本が3.9%、ブラジルが1.4%などとなっています。

温室効果ガス削減目標
主な国・地域が提出している削減目標は、以下の通り、
中国―2030年までに減少に転じる
アメリカー2025年までに26~28%減(2005年比)
EU=欧州連合―2030年までに少なくとも40%減(1990年比)
インドーGDP=国内総生産あたりの排出量を2030年までに33~35%減(2005年比)
ロシアー2030年までに25~30%減(1990年比)
日本―2030年度までに26%減(2013年度比)

(c)英語のニュース

Delegates from 175 countries and territories have signed the Paris agreement on climate change at the United Nations headquarters in New York.
The agreement was reached at the U.N. climate conference in Paris last December. The Paris agreement calls on all countries to make efforts to limit
emissions of greenhouse gasses as soon as possible and bring them to virtually zero in the second half of this century.
U.N. Secretary General Ban Ki-moon, in his opening speech, called on the participants to put the Paris agreement into action.
French President Francois Hollande, U.S. Secretary of State John Kerry and other delegates attended the ceremony.
The Paris agreement will come into force once over 55 countries representing at least 55 percent of global emissions ratify it.

(c) ニュースの比較研究

地球温暖化対策の新しい国際的枠組みであるパリ協定の調印式のニュースについては、日本のメディアも外国のメディアも報道していました。しかし、一般的にいって、環境問題については、日本のメディアは、京都議定書の前後は、力を入れて報道していましたが、現在では、それほどではありません。しかし、外国のメディアは、相変わらず関心をもって報道しています。外国のメディアの多くは、アメリカのケリー国務長官が、孫娘を抱いてサインしている映像や写真を合わせて掲載していました。

アメリカの『USA TODAY』紙は、”175 nations sign historic Paris climate deal on Earth Day”(175か国、”アース・ディ(地球の日)“に歴史的なパリ気候協定に調印)という見出しで、”World leaders from 175 countries signed the historic Paris climate accord Friday, using Earth Day as a backdrop for the ceremonial inking of a long-fought deal that aims to slow the rise of harmful greenhouse gasses”(175か国の世界の指導者は、アース・ディ(地球の日)を機会に、歴史的なパリ気候協定に調印した。これは、有害な温室効果ガスの増加を緩やかにするための長い間難航した協定の儀式的な調印ということが背景にある)と報じました。

アメリカの『CBS(=Colombia Broadcasting System)』放送は、”U.S. joins 174 nations to sign hard-won climate pact”(アメリカ、174か国とともに、難航の末に妥結した気候協定に調印)という見出しで、”At least 171 world leaders
gathered Friday at the United Nations to sign a sweeping climate agreement negotiated last year and aimed at slowing global warming and helping poorer nations affected most it”(少なくとも171か国の世界の指導者が、国連に集まり、包括的な気候協定に調印した。その協定は、昨年交渉し、地球温暖化を緩やかにし、その影響を大きく受けている貧しい国々を助けるものなのだ)と報じました。

イギリスの『BBC(=British Broadcasting Corporation)』放送は、”Nations sign historic Paris climate deal”(各国、歴史的パリ気候協定に調印)という見出しで、”Amid hope and hype, delegates have finished signing the Paris climate agreement au UN headquarters in New York. Some 171 countries inked the deal today, a record number for a new international treaty”(希望と誇大宣伝の中で、各国の代表たちは、ニューヨークの国連本部で、パリ気候協定の調印を終えた。およそ171か国が、その協定に調印した。これは、新しい国際条約としては、新記録の数字だ)と報じました。

オーストラリアの『ABC(=Australian Broadcasting Corporation)』放送は、”Paris Agreement: More than 170 world leaders sign United Nations climate deal”(パリ協定:170か国以上の世界の指導者、国連の気候協定に調印)という見出しで、”A total of 175 countries have signed the Paris climate agreement at the United Nations in New York City, a record for a one-day signing of an international accord, the UN says”(国連の発表によれば、合わせて175か国が、ニューヨーク市の国連で、パリ気候協定に調印した。国際協定が1日かかって調印したのは新記録だ)と報じました。

中東・カタールの『Aljazeera』放送は、”Climate change: World leaders sign Paris deal”(気候変動:世界の指導者、パリ協定に調印)という見出しで、”World leaders have signed at the UN headquarters to ratify the Paris climate deal and get the ball rolling on plans to check global warming.(世界の指導者が、国連本部で、パリ気候協定を批准し、地球温暖化を阻止するための計画を実施に移すために調印した)と報じました。

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